イチロヲ

ファスビンダーのケレルのイチロヲのレビュー・感想・評価

ファスビンダーのケレル(1982年製作の映画)
3.0
港町に降り立った美男の水兵ケレルが、町を牛耳る警官と売春宿の主人を魅了しながら、暴力と裏切りのカオス状態を誘発させていく。ジャン・ジュネ著「ブレストの乱暴者」をアレンジしている、ゲイ・ムービー。ファスビンダー監督の遺作。

コサキンラジオのホモネタで使用されるキーワード「ケレェ~ル!」の元ネタとなっている作品。いわゆる、"魔性の男が破綻をもたらす系統"であり、水兵たちが抱え込んでいる、ホモセクシャル、ナルシシズムがテーマに取られている。

セット撮影を最大限に利用した絵画調の構図と不思議な間をもたせた演劇調の振り付けにより半醒半睡の映像世界を構築。ケレルと瓜二つの兄だとか、理想の男性像を求める警官だとか、至るところにナルシシズムを連想させる暗喩が織り込まれている。

ゲイ同士の濡れ場(穴掘りシーン)が登場するが、セリフ劇が淡々と進行するスタイルのため、全体的に地味な印象が強い。「物語内のケレルは、実在しているのか?」という疑念を抱きながら、性科学的な"脳みその不思議"を感じ取ることが大切。漏れっ。
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