tak

雲南の少女 ルオマの初恋のtakのレビュー・感想・評価

雲南の少女 ルオマの初恋(2002年製作の映画)
3.1
 世界遺産に指定された雲南。棚田が広がる美しい村にはハニ族という少数民族が住む。昔ながらの生活を送る彼らにも近代化の影響は及んできている。都会と田舎の経済格差、貧富の差、近代化による新しい中国と昔からの中国。その対比はこれまでも多くの映画で語られてきているテーマ。17歳の主人公ルオマも友人が都会に嫁に行くことから、漠然と都会に憧れを抱いていた。

 とうもろこしを売りに出た街で、ルオマは写真家のアミンと出逢う。アミンは観光客がルオマと写真を撮りたがるのを見て、彼女と一緒に棚田をバックに写真を撮る商売を思いつく。行動を共にすることで、ルオマは次第にアミンに恋心を抱き始める。閉鎖的なハニ族の生活から、ルオマの世界が少しずつ広がり始めるのだ。とうもろこしの代金の代わりにアミンが渡したウォークマンもそのひとつ。ヘッドフォンから流れるのはエンヤのCaribbean Blue。癒しの音楽の代表ともいえるエンヤとこの風景がなんとマッチすることか。次々に訪れる観光客とルオマたちハニ族との様子を比較するだけでも、格差という現実が読み取れるはずだ。

 おばあちゃんが口数が少ないながらもルオマを見守る様子がとても印象的。ハニ族の生活の様子も興味深い。結婚前夜に好きだった者が花嫁に告白する習わし。都会に嫁に行くルオマの友人は銀の腕輪を贈られる。そのことをおばあちゃんに話すルオマ。そのおばあちゃんの手にも腕輪が。田植え前に若い男女が泥玉を投げ合うところも心に残る。最初に投げる泥玉は、好きな相手に向かって投げるのだ。ルオマの家を訪問したアミンは、おばあちゃんからその習わしを聞く。その後、水田にアミンが落ちる場面でその習わしが無言の伏線となっている。うーん、実に見事。脚本がよく練られている。

 ルオマの恋は結局成就することはない。「中国の小さなお針子」のように劇的に彼女の人生を変える恋ではなかったが、彼女を確実に成長させる恋だった。アミンと一緒に都会に行って、どうなったろう。一人の女性として愛されることができただろうか。「山の郵便配達」のお母さんのようにさみしい思いをするだけではなかっただろうか。アミンは結局、美しい棚田の背景の中に立つルオマを愛したのではないだろうか。そのままの彼女を。純粋な気持ちを呼び起こしてくれる佳作。

北九州映画サークル協議会例会にて鑑賞。
tak

tak