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つみきのいえのWILDatHEARTのレビュー・感想・評価

つみきのいえ(2008年製作の映画)
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採点不能。

主人公のお爺さんの秘められた深層心理へと深く潜ってゆく旅を、海に沈んだ多層構造の家というメタファーとして戯画化したアニメだとばかり思って観始めた。
長い人生ならではの哀惜や封印してしまった人には言えぬ想いなど、どんな「深い」心理が露呈していくのかと期待して観ていたのであまりにストレート過ぎるお話に拍子抜けしてしまった。

人間の意識を視覚化する場合水面下に潜在意識を、水上に顕在意識を設置して例える手法が非常に映画的で面白いと思って期待していたのだが・・・
(そして周りにも無数の人の無意識が水中に沈んでいるという戯画)


僕がひねくれているが故の勘違いでした。


保険商品のCMにありそうなハートウォーミングストーリーでこういうのが好きな人にはハマりそう。


僕はこの映画のお爺さんのように穏やかに人生を振り返るにはあまりに醜悪で卑劣なことや恐ろしいことを経験し過ぎた。
人生に出現する他者の一部がどれほど卑しく、また自分の人生にとって致命的なほどに残虐になり得るのかということを身をもって体験するとこのように単純に図式化された映画が普遍性を有しているとはやはり思えなくなってしまう。

思い出とはこの映画に描かれているようにただ真っ直ぐ上に積み上がるものではなく途中で腐食して崩壊してしまったり、あるいは二度と開けられない様に厳重に封印され「開かずの間」として葬り去られたりする。
魑魅魍魎が詰まった化け物屋敷になった階層もあるかも知れないし暗黒の闇に覆われた虚無が広がる異空間と成り果てた階層もあるかも知れない。
記憶ほど忌まわしいものは無い。

この映画にはそうした人生の多様性は描かれていない。

よって個人的に共感することは出来ないが多くの人にこのような映画が感銘を与え得る世の中であることはこの国が平和である証左であって喜ばしいと感じられた。
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