Ryoma

ゼア・ウィル・ビー・ブラッドのRyomaのレビュー・感想・評価

3.8
評論家筋からの評価が異様に高かったので過度に期待してしまった。
オープニング、レディオヘッドのジョニーグリーンウッドが生み出す不気味で異様な音世界、の中で黙々と進められる石油作業、を捉える滑らかなカメラワークの完璧さ。一切のセリフは排除され映像によってのみ語られるオープニングの映画的素晴らしさと言ったら、そりゃ素晴らしい。
石油採掘所が燃え上がるシーンの緊迫感、炎の美しさ。主人公が「自分は子供を捨てた」と叫び贖罪するシーンの震え。画面を越えて伝わってくる異様な震え。そんな数々の「映画だなあ」と感嘆してしまうシーン、やっぱり凄い。
けれども、ラストシーン周辺、というかラストシーン。何か幻滅してしまった。この映画のラストシーンはあくまで僕の個人的な感性の上において、オープニングや石油採掘所が燃えるシーン、主人公が教会で贖罪するシーン、よりも遥かに、映画になっていない、と一言でいうのは簡単だけど、なんかそんな風に感じた。安っぽく感じる、とってつけたように感じる、ということ。俳優の演技、カメラワーク、台詞、というか空気感、画面と自分との間の空気感、それがなんともまばらでもろいように感じた。また無論物語の上においてもラストシーン周辺は、いささか早急で中身に欠ける、そういう風に思う。
しかしこの映画を評価してる人や好きな人は、ラストシーンを特に褒めてるようなので、もうそこは好みの問題、感性の問題だろう。結局素晴らしいシーンも多いが残念なシーンもある、なんとも割り切れない映画だというのが僕の評価だ。
Ryoma

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