がちゃん

ゼア・ウィル・ビー・ブラッドのがちゃんのレビュー・感想・評価

3.9
ダニエル・デイ=ルイスが第80回アカデミー主演男優賞を受賞し、併せて撮影賞も獲得した、ポール・トーマス・アンダーソン監督の力作。

P・T・アンダーソン監督作品は、『ブギ―・ナイツ』(1988)は私的にとても面白かったのですけど、『マグノリア』(1999)がちょっと苦手で、ちょっと評価が難しい監督なんです。

そこで、本作についてなのですが、
結論を先に言うと『面白かった』です。
いずれ血が流れるだろうというタイトルに偽りなしです。

20世紀初頭のカリフォルニア。
幼い息子のH・Wを伴って油田を探していた主人公ダニエル・プレインデュー。
あるとき彼は、サンデー牧場に石油が出る兆候があるという情報をサンデー家の青年ポールから得る。
ダニエルは息子のH.Wをパートナーとして連れ、家長でポールの父であるエイベルとポールの双子の兄イーライと交渉し、貧しいサンデー家から採掘権を買い取った。

そして石油の掘削仲間を呼び寄せ、牧場の一角を掘削するとまさにそこから石油が噴き出した。
しかし、その石油が噴き出したときの爆風に吹きとばされ、息子のH.Wは聴力を失ってしまう。

ダニエルにとってパイプラインを通すための大事な土地の所有者バンディは、パイプラインを通すために土地を渡す見返りに、イーライが主宰する宗教への入会を迫る。

ダニエルはこの条件をのみ、イーライの行う教会のミサに参加するのだが、ここでダニエルはイーライから屈辱的な懺悔を強要される。

なりふり構わず石油に対する己の欲望を果たしていくダニエル。
ろう学校に預けたH.Wに変わり幼い頃に別れた弟を交渉人として大手石油会社と商談し、
ますますその財産を拡大していくのだったが・・・

ここまでの展開は、一人の非情な男が成り上がっていく成功物語として観ていけるのだが、ここから雰囲気が一変しホラーと見紛うようなお話になります。

イーライの主宰するミサを初めて見た時にインチキと見破ったダニエル。大衆の面前で屈辱的な懺悔をさせられたことに対する復讐が凄いです。
似非牧師のイーライと欲望のためならば何でもするダニエルとの対決。

石油掘削の場面などは地味なシーンが続くなあと思っていると突然の爆発。
この炎上シーンは、『風と共に去りぬ』(1939)でのアトランタからの脱出シーンを彷彿とさせてくれました。
アカデミー撮影賞は伊達ではありません。

スタンリー・キューブリック監督作品を思わせる室内装飾やカメラワークは、ジョニー・グリーンウッドの不協和音に似た音楽も相まって何が起こるかわからない不安な気持ちを観客に抱かせる。

そして主演を演じた・ダニエル・デイ・ルイスは、まるでこの石油にとりつかれた男が憑依したような熱演。
時に息子H.Wに優しい表情をみせたりするから狂気が倍増するんだ。

そしてラストが鮮やかだね。
それこそキューブリック監督の『時計じかけのオレンジ』のように、
一言で終わるところ。
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