Toranosaurus

ゼア・ウィル・ビー・ブラッドのToranosaurusのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

見終わった直後は「長かった、よくわからなかった」という感じだったのだが、しばらく経つとじんわりと読み取れてくる作品だ。台詞は極端に少ないが、これは意図的に減らしているのか、あるいは、そもそも本作の登場人物たちは語ることを持っていないのではないか。
主人公は石油の採掘権を手に入れ成功を収める。だが、その成功は明らかに空しいものとして描かれている。金を手に入れたところで彼には欲しいものなどないからだ。いや、はっきりと欲しいものが描かれているともいえる。血縁である。出自不明の「弟」の出現を疑いつつも喜ぶ。その一方で、偽りの血については厳しい態度をとる。だからこそ、弟の真実がわかった際には驚くべき行動をとるし、それは「息子」に対しても同様だ。結局、彼の欲しいものは手に入らない。だが、それでも主人公は偽りの血についての戦いは捨てない。他人の土地から血を吸うかのように石油を吸い上げていることを認めつつ、キリストの血による救済を説く牧師を撲殺する。ボーリングのピンで殴られた牧師の頭からは血があふれ出る。客観的に見えれば主人公の行動は無茶苦茶なのだが、最後の対決シーンにはどこか爽快感がある。自分が本当に求めるものを手に入れることができなくても、偽りの救済にはすがらないからであろう。
タイトルの「血blood」が何を意味するのか。自信はないが、このような読み取りは可能だろう。
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