『女囚と共に』1956(昭和31年)東京映画(東宝子会社)
豪華オールスター女優で描かれる誠実な女囚映画。長尺だが飽きさせない。
原節子(『東京物語』『青い山脈』『麦秋』『秋日和』)
田中絹代(『西鶴一代女』『楢山節考』)
久我美子(『酔いどれ天使』)
香川京子(『ひめゆりの塔』『悪い奴ほど良く眠る』『天国と地獄』『モスラ』『赤ひげ』『島守の塔』)
淡路恵子(『野良犬』)
岡田茉莉子(『秋津温泉』『人間の証明』)
谷洋子(『近松物語』『生きものの記録』)
菅井きん(『どですかでん』『お葬式』)
木暮三千代(『青い山脈』『お茶漬けの味』)
浪花千栄子(『祇園囃子』『二十四の瞳』『近松物語』『夫婦善哉』『お父さんはお人よし』)
千石規子(『酔いどれ天使』『野良犬』『静かなる決闘』)
中北千枝子(『素晴らしき日曜日』『酔いどれ天使』『早春』)
そうそうたる女優陣の演技合戦。
実際に女性刑務所の所長を務めた方の手記をもとに『めし』『流れる』の田中澄江が脚色して『警察日記』の久松静児が映画化。
上映時間146分(2時間26分)。たくさんのエピソードが盛り込まれていてかなり長いはずだが語り口が巧みでちっとも飽きさせない。監督の腕前ですね。
久我美子の反抗的な男言葉と滑舌が爽快。
菅井きんさんの看守役がはまっている。
淡路恵子が露出が多い服で踊り狂う。「このアプレ!」と罵声を浴びるのが時代を感じさせる。
後に悪役として活躍した上田吉次郎さんが看守を神妙に演じている。
看守の制服がアメリカ軍の女性用軍服みたい。これも時代ですね。
刑務所内の場面は使われなくなった実際の刑務所で撮影されたのだろうか。本物の迫力がある。
囚人達が罪を犯すにはそれぞれの理由がある。多くは男によって犠牲になったのが原因だ。
刑務所の中で生まれる子供もいる。刑務所外の保育所に預けられて暫くぶりに面会が許された時母親の顔を忘れている場面が辛い。
やはり戦後のこの時代は女性はまだまだ男に食わせてもらう時代だった。田中絹代所長の努力が実り刑務所内の美容師養成所が正式に美容学校として認可される。
一方で所長は課長(原節子)に「やっぱり女の幸せは結婚して子供を産むことよ」と語る。
製作された時代としては一般的な価値観というしかない。
誠実に描かれた作品。罪を犯した人は私達と変わらない同じ人間だという事を考えさせられる。かと言って法務省の宣伝映画にはならず苦い現実も描かれている作品でした。