スギノイチ

任侠外伝 玄海灘のスギノイチのレビュー・感想・評価

任侠外伝 玄海灘(1976年製作の映画)
4.5
拷問、スカトロ、猟奇、在日、死姦、輪姦、近親相姦…さらには撮影中の発砲事件によるスキャンダル。
おおよそ一般の映画においてやっちゃいけないであろう事を全てやり遂げている怪作だ。

配下の外道どもは「オマ○コ出せや!」と韓国娘達を集団で輪姦し、路地裏では白塗りのホモ共がいちゃつきあう劣悪な環境の中、安藤昇は蛆の沸いた味噌汁を飲みながら死んだように生きている。
かつて犯した女の娘と再会し、死んだような人生がさらに陰鬱としたものになっていく。
撃たれた耳からは顔の横からドス黒い血飛沫を噴出する。
とっくに死んだ男の身体に詰まっていた膿や汚水がようやく吹き出てきたのか。

本作には、路地裏の汚いオカマ、入道、変態どもといった社会的な底辺に蠢く人々が多く登場する。
中でも虐げられた存在として在日韓国人を扱っているが、唐十郎のそれは所謂左翼思想とは違うように思えた。
右だ左だというよりは、怨念を持ったマイノリティの情念を彼女らに託しているのだろう。
拳銃事件のせいで唐十郎が編集に携わっていないという説もあるが、そのせいかストーリーは甚だへっぽこであり、穴戸錠の因縁と根津甚八の色恋の話の連結が弱いせいで、クライマックスの決闘がどうでも良い事になっている。
だが、シーン毎に観てみると非常に印象的で強烈であり、登場人物全員が己のカルマを爆発させている。
安藤昇は幽霊みたいだし穴戸錠はいつも以上に悪辣なのだが、特に小松方正の狂い方は白眉。

正直、初見時は「こんなに過激なのに、なんで面白くないんだろう」という感想を持った。
それなのに、何日経ってもこの映画が忘れられず、ついにDVDまで購入してしまった。
あまりに強すぎる毒に当てられると、かえって癖になってしまうようだ。
スギノイチ

スギノイチ