半兵衛

白昼堂々の半兵衛のレビュー・感想・評価

白昼堂々(1968年製作の映画)
3.4
泥棒など犯罪によって生計を立てている部落というブラックな題材を、松竹喜劇というスタイルの中に組み込んでなおかつ多彩なスター映画としても成立させてしまう野村監督の職人としての手腕はさすが。俳優に自由に演技させているようで、スリや泥棒のリアルな手口をしっかりと描いてケイパー映画としての軸をしっかり固めているので喜劇としてのわちゃわちゃはあってもちゃんとスリリングな緊張感があるのが凄い。

メインヒロインの倍賞千恵子がなぜか途中から姿を消したり(終盤には出てくる)、スリグループの生田悦子と新克利のドラマが単なる彩りで終わりドラマに絡まないなど、?と思うところはあるが、それでもスマートな語り口で見せていくのが見事。

主役の部落のリーダー渥美清よりも、彼と手を組む元スリの藤岡琢也のほうが中年の枯れた味わいと元犯罪者としての陰があってノワールのキャラみたいで存在感がある。あと田中邦衛はこれと同じ原作によるリメイク版とも言える『女咲かせます』の両方に出てるのか。

川島作品での胡散臭いキャラを彷彿とさせるフランキー堺や有島一郎によるいぶし銀の老刑事も味わい深い。

ケイパーものの割にはラストは結構明るいのでプログラムピクチャーを見た爽快な気分に。それとラストの倍賞千恵子による藤純子や梶芽衣子よりもドスの効いた啖呵の切り方も見物。

これと『女咲かせます』を見ると、同じ泥棒部落をモデルにした植木等出演の『喜劇 泥棒大家族』が見たくなる。
半兵衛

半兵衛