桑原

ノロイの桑原のレビュー・感想・評価

ノロイ(2005年製作の映画)
4.0
低予算モキュメンタリーと侮るなかれ、俺はビビってカーテンを閉めたぞ。

この映画の何が怖いって、グロ描写でもなく、呪い祟りといった超常的な力でも無いと思っていて、蓋をしていたはずの不快な記憶が、既視感に切り替わっていく部分にこそあると思う。

「地域で有名な電波系人間」「怪文書」「隣人トラブルの絶えない婆さん」「ゴミ屋敷」「鳩をやたら飼ってる家」こんな感じの、なるべく関わらないようにしよう、見ないフリしよう、といった日常と隣り合わせの不快感が惜しみ無く描かれ、忘れていたはずの景色が既視感として蘇ってくるのだ。

そこに「駆け出しタレントが止む無く参加する心霊番組」や「うさんくさい超能力番組」といった現実と地続きのグリッドが用意されることで、フィクションと理解していても、妙なリアリティを味わえてしまう。

それはまさに、
"都市伝説が伝承される事で存在し得る"ように、「本当にあったこと」という嘘が真実味を産み出す、その現象そのものにさえ寒気がしてくるのだ...

二度三度と見れば笑ってしまうだろうが、ぼんやり見ていたつもりが、グッと引きずり込む力が凄まじい一本である。すっかり白石ワールドの虜になってしまった。

言い方ァァ!!!!


と、思いつつ、最近あんな家減ったし、あの手のうさんくさい番組も無くなってしまった。
この映画の醸し出す妙なリアリティと、生暖かい不快感を肌感として感じられるのは、案外俺世代がギリギリになるのかもしれない。
素晴らしい作品であるが故に賞味期限があるのが残念で仕方ない。
桑原

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