まさやん

ウィスキーのまさやんのレビュー・感想・評価

ウィスキー(2004年製作の映画)
5.0
ここまですうっと浸れる映画に出会ったのは久しぶりだなぁ。

寂れた靴下工場を経営するハコボと、そこでハコボの助手として働くマルタ。

ある時、ハコボの弟エルマンがハコボ宅に滞在することになり、弟の滞在期間中、妻役を演じてほしいとハコボにお願いされたエルマはそれを承諾する。

偽装夫婦と弟の3人で交わされる会話のきまりの悪さと、熟年期を迎えた3人それぞれの独特な表情がきめ細やかに描きこまれていて、3人それぞれの立場全てに感情移入してしまう。

日常生活における様々な人情の機微を、映像でしか表現できない丁寧な仕掛けをたくさん織り交ぜながら表現していて、画面いっぱいに視点を広げて見入ってしまった。

どこか日本的とも思える無常観の連続の中に、敢えて描かずに鑑賞者に想像させる工夫も凝らされていて、観た後の余韻の残し方も実に新鮮である。

とにかく、物語的展開と絵画的あるいは文学的な芸術性のバランスが抜群に良く、何度観ても飽きない至高の作品だと思う。
まさやん

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