トランティニャン

ウィスキーのトランティニャンのレビュー・感想・評価

ウィスキー(2004年製作の映画)
3.5
おかしみのある雰囲気を持った良作。東京国際映画祭で注目されなければ間違いなく見なかったであろう地味な作品にも関わらず、映画として真っ当な演出力をみせつけられた。

『ウィスキー』を観て改めて思ったことは、普通の人ってめちゃめちゃ面白いってこと。何で車のエンジンがかからないだけで、こいつらがエアーホッケーを必死になってやっているだけで笑えてしまうんだろうか、と。
とは言えシュールさだけを狙った映画ではなく、普通このアングルで行かないだろというフレーミングや、通常使わないようなカットを挟むことで独特の間を醸成し、退屈極まりない物語を面白く見せることができるんだという創意工夫の結果なのだ。カウリスマキに喩えられるのもそういうところからだろうか。

登場人物3人の性格はバラバラだが、ハコボの駄目男っぷりには愛着が持てる。どんどん女らしさを取り戻していくマルタとは対照的に、ハコボはいつまでも変化を恐れ、他力本願で何かいいことが来るのを待っている。そんな彼の「不器用な気持ち」を受け取ったマルタは最後どうするのか。ラストの微細な変化(冒頭のしつこいまでの演出がここで効きました)に要注目。