ミミック

月世界旅行のミミックのレビュー・感想・評価

月世界旅行(1902年製作の映画)
4.0
カラー版。本編が作られた背景や監督の紹介、カラーの復元の様子が描かれた2011年のドキュメンタリー「メリエスの素晴らしき映画魔術」と合わせて見るのをお薦めしたい。

ジュール・ヴェルヌの「月世界旅行」とH・G・ウェルズ「月世界最初の人間」をもとにジョルジュ・メリエスが製作・脚本・監督・出演した1902年の14分のサイレント作品。

ストーリーは、月旅行に出掛けた6人の学者達が見事着陸に成功しめくるめくファンタジックな世界を楽しむが、月人なる異星人に襲われ命からがら脱出して地球に帰還するという、名作に多い王道の「行って帰ってくる」フォーマットの雛型が既に完成しているのが凄い。

勾配の急な雛壇のある研究所の宗教画のようなシーン、巨大なキノコに囲まれた月での幻想的なシーン、街中で大騒ぎのなか迎えられる6人の飛行士の祝祭的なシーンなど、どの場面も絵本の一枚画のように隅々まで作り込まれたセットに目を奪われる。

砲弾型のロケット、月人が消失するときに出る煙、そして一番インパクトがあるロケットが目に刺さった人面の月のビジュアル、など独創性溢れるアイデアが今見ても楽しい。

ライト兄弟が有人飛行に成功したのが1903年、それより前に月に行くなんていう完全な絵空事を、映像として目の前に見せられるんだから、当時としてはそれこそ「2001年宇宙の旅」とか「インターステラー」みたいにロマン溢れる最先端SFとして受け入れられたんだろうな。

新しい映像を見せて観客を驚かそうと企むジョルジュ・メリエスの情熱は、120年近くたった現在でも、全く色褪せることなく映像の中に生き続けている。
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