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ハンバーガー・ヒルのodyssのレビュー・感想・評価

ハンバーガー・ヒル(1987年製作の映画)
3.5
【兵士たちへの優しい眼差し】

BS録画にて。

1969年のヴェトナム戦争を材料にした映画。
或る高地を占領せよとの指令を受けた分隊が、犠牲者を多数出しながら目的と遂げるまでを描いています。

といって、アメリカの栄光を讃えた映画ではありません。
アメリカ国内ではすでに反戦運動が盛んになっている。
国内の恋人からの手紙には、「もう手紙は書かない。戦争に賛成していると思われるから」と綴られています。

現場にやってきたマスコミは、「(ロバート・)ケネディは見込みのない戦争だと言っていますが」と兵士たちに話しかける。そんなことを言われても命令に従うしかない兵士はどうすればいいのでしょうか。

休暇には現地ヴェトナム人の女の子と戯れたり、兵士同士で喧嘩をしたり、黒人兵士が自分たちの立場をそれとなく口にしたりと、色々な場面が盛り込まれていますが、最終的には戦争の現場に命をかけるしか道はないのです。

「戦争を憎んで兵士を憎まず」・・・これはそういう映画なのではないか。
ヴェトナム戦争が有意義な戦争だという高揚感はこの映画にはないけれど、といって反戦を訴えた作品でもない。
兵士たちに向けられたこの映画の眼差しは、とても優しく感じられます。
戦争のむなしさを感じつつも、黙々と命令に従った男たちの鎮魂歌なのかな、と思いました。
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