ナツミオ

頭上の敵機のナツミオのレビュー・感想・評価

頭上の敵機(1949年製作の映画)
4.0
NHK-BSPプレミアムシネマ
録画鑑賞
10回以上は観てるお気に入りスルメ作品。
キング監督と主演ペックのタッグは、やはり普通の戦争映画で終わらせない人間ドラマの名作。

過去レビューも再見でレビュー追記

アカデミー賞4部門ノミネート(作品・主演男優・助演男優・録音賞)
助演男優(ディーン・ジャガー)・録音賞(トーマス・T・モールトン)受賞。

原題 『Twelve O'Clock High』

1949年米作品モノクロ
監督 ヘンリー・キング(脚本兼ノンクレジット)
原作・脚本 サイ・バートレット
原作 ベアーン・レイ・Jr.他
音楽 アルフレッド・ニューマン
出演 グレゴリー・ペック ディーン・ジャガー ヒュー・マーロウ ゲイリー・メリル ミラード・ミッチェル

第二次世界大戦中の1942年秋、ヨーロッパ戦線で戦う米軍は陸軍航空隊の爆撃部隊のみ。
戦況はまだドイツ軍有利な状況下、多大な損害で弱体化した米軍爆撃機部隊の立て直しに送り込まれた指揮官が、その方針により部下達の反発を受けながらも、彼らを鍛え上げ、任務を全うする指揮官の奮闘と苦悩。
マネージメント、リーダシップの教科書的な作品としても考えさせられる作品。

好きなセリフ
・前半、部隊の操縦士達全員から転属願いが出され窮地に陥るサヴェージ准将(ペック)と副官ストーバル(ジャガー)。
部隊の立て直しの時間稼ぎの為、サヴェージから相談されたストーバル(平時は弁護士職)の策略を聞いて、
「官僚的な悪知恵はすごい!」
「その通り」
「君に迷惑をかけるかもしれん」
「大丈夫です。弁護人は有罪にされません。」

過去レビュー
第二次大戦終戦4年後に製作されたこともあり、実際の航空機がゴロゴロ出てくる。

戦争中の実写フィルムが多用されているのもあるが、戦略爆撃(白昼精密爆撃)の主力を担った米・陸軍航空軍第8空軍の爆撃部隊の指揮官に赴任した指揮官(グレゴリー・ペック)を主人公に、彼の苦悩、部隊の指揮、戦闘、戦果、部下の副官や将校、乗組隊員達との人間ドラマを描く秀作。


以下、少しネタバレ

調べてみると、実際の部隊や、複数の人物がモデルになっている様です。
最初の部隊指揮官ダベンポート大佐は部下を想う余り、中々戦果を挙げられず、更迭され、上官のサベージ准将(グレゴリー・ペック)が新しい指揮官となる。

彼は、部隊の指揮を取るにあたり部隊の弱点を見抜き、厳しい訓練で部隊を徹底的にしごき、冷淡に立て直しを図ることから、部下の操縦士たちから集団で転属願いを受けることになる。

そうしてサベージ准将自らも出撃し実戦を通じて戦果が出始める。困難なミッションをこなす中、優秀な部下も次々と失われていき、サベージも精神的、肉体的にも疲弊していく。部隊は確実に成長していく。そして最重要ミッションであるドイツ本土への長距離爆撃開始にサベージは飛行機への搭乗時に統合失調症を発病し出撃を止められ、部隊は彼を残し飛び立っていった・・・

当時、過酷な任務遂行でのストレスによる統合失調症など発症する兵士は多かった様です。

部隊の長距離爆撃機は初期の頃は、護衛戦闘機は航続距離の問題で援護が無く、爆撃機の密集編隊と機体の機銃のみでカバーしあい、ドイツ空軍戦闘機の攻撃を防御していた。当然脱落した機体は敵の餌食になっていく。

この映画は、リーダーシップの基本教材として軍部だけで無く、一般企業でも広く使われたそうです。
また、原題の「Twelve O'clock High」は、飛行機の進行方向に対して敵機の方向を示す用語で、直訳すると「12時方向」つまり頭上の敵機を意味します。

レビュー後、スコア3.7→4.0へ変更。

スルメ作品

1998年にアメリカ議会図書館アメリカ国立フィルム登録簿に文化的、歴史的、芸術的に顕著な作品として登録。
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