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アメリのrensaurusのレビュー・感想・評価

アメリ(2001年製作の映画)
4.8
ふとした時に湧いて出た愛が、巡り巡って自分に帰って来るような物語。これを、奇跡のようなものではなく、なるべくしてなったという確かな運命の物語として語ってくれたところが素晴らしかった。

想像力が最大の味方であり、最大の敵でもあるアメリ。悶々と肥大化するニトへの恋愛感情と、擬似失恋によってピークに達した彼女の渇望が、都合良く満たされたように見えて実は、すべての始まりを辿ると、アメリの天命とも言える誰かへの奇跡の施しに発端があることが分かるようになっている。ラストは文字通り、アメリがニトを受け入れることが出来るようになったこと、すなわち、現実と幸せを受け入れるようになったことが表れていて、こちらも満たされるような気持ちだった。

モノローグが多用されるストーリーテリングは、最初でこそ超具体的で詳細で誰視点の情報なんだと面食らいはしたが、現実をどこか客観的に見ていて必要以上に想像力を働かせるアメリの性格に通づるものを感じ、結局は効果的だったと思う。

幼少期のドタバタ劇も、「アメリの脳内を通した現実の記憶」のような手ざわりがあり、こういう風に見えたんやろなぁと感性を共有できたようで嬉しかった。劇中にちょくちょく出て来る空想動物や、電車での移動の際の疾走感のあるブレ、自分が水になり床に散らばっていく表現なども、感性と感覚を的確に表していた。

性描写も、奥行きを持たせない現実と地続きのものとして映しており、傍目で見ると醜くて気持ち悪いし滑稽だけど、まあそんなもんだよなぁと苦笑しつつ受け入れられた。

映画全体として、出て来る人それぞれにごく普通の生活感があり、アメリがそれと関わっていく中で、好きな人嫌いな人、相性が良い人悪い人と自分の直感に基づいて世界と関わっていく様子が、見ていて良かったし、それで良いんだよなと妙な納得感があった。

音楽や色彩、美しい構図と視点を変えるようなカメラワーク、ロケ地、服飾、小物等々、眺めているだけでも快い。

結構自分にどストライクな映画でした。大好き。
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