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娘・妻・母のricoのレビュー・感想・評価

娘・妻・母(1960年製作の映画)
4.8
成瀬巳喜男って本当にドラマを撮るのがうまい。
ひとりひとりが誰かに対して気を使ったり、気を使わせたり、絶対的な悪者な訳でもなく、自分を擁護しながら誰かを傷つけたり心配したりする。

家制度がなくなった現代の家族関係の脆さとか、老人に対しての扱いなど重いテーマで、話が進むにつれ切ない展開になるのですが、そのドラマをとても美しく表現しきっていて溜息がでます。
重い展開の中にもユーモアのある台詞なんかもあり、今のドラマと違って脚本のレベルも違うことがまざまざと見せつけられます....。

見ているうちに段々と原節子さんの美しさにも引き込まれてしまうし、やっぱり杉村春子さんの演技もうまいし、何よりも原節子さんのお部屋でのキスシーンのくだりは演出も見事すぎました。

ラストの笠さんの台詞なんかを聞いたりすると、やはり成瀬さんはフェミニストなんだなあと思ったりしてしまいますね。

オールスターキャストなので力も入っているのだと思いますが、内容も本当によくできていて素晴らしいと思います。
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