ブラックユーモアホフマン

愛のむきだしのブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

愛のむきだし(2008年製作の映画)
3.7
俺はもう、シンエヴァ後の人間なのよ。

大学に入って出会った映画好きの3人に1人は『愛のむきだし』か『リリイ・シュシュのすべて』かその両方に影響されていて、4人に1人はゆらゆら帝国が好きだった。正直、僕はその感じが苦手だった。サブカルっぽい感じ?何度もオススメされたけど今まで観てこなかった。避けてたというより単に食指が伸びなかった。ついに観たよ。

最近、満島ひかりをTBSラジオでよく聞いて、アマプラの見放題終了間近だったから。今まで観なかったのに自然とスッと観られた。

2008年の日本映画。思春期真っ只中からもゼロ年代の日本映画からも時間的に心理的に距離が取れている今だから観てもいいかという気持ちになれた。

なるほど確かに園子温は一時期の日本映画界、というより日本の自主映画界に多大なる影響を与え一時代を築いた監督だったんだなということを実感した。でも今、ちょうど古くてダサくなってる。もう半周したらまたこういう流行りが来るのかもしれないけど。

エヴァに似たものを感じる。多感な時期に観たら影響されてしまう人は多いだろうなという刺激物。自身の男性性やマザコン/ファザコンと葛藤する主人公。

でもエヴァが終わった2021年に僕はこの映画を観ています。そういうこと。つくづく今観て良かったと思う。

そりゃ自分も多感な時期に観ていたら、もっと激しく心揺さぶられて、ある意味もっと楽しめたのかもしれないけど、なんか、それはいいや。他のものに影響されたから。その方が自分にとっては良かったと思う。

ちなみに『冷たい熱帯魚』の方が好き。安藤サクラよりでんでんの方が怖い。あとこれよりは短いから。146分あるけどね。十分長いけど。

さすがに長い。展開盛り沢山過ぎて疲れる。意図的に疲れさしてるんだろうけど。

アンモラルの極み。熱帯魚もそうだったけど。また違う角度の。盗撮に打ち込む青春ってのは面白い。

しかしニッシーがすごい。他にほとんど映画出演がないのは、もうこの映画で出し尽くしてしまったからだろうか。確かにこれ以上のものは難しいだろうし、撮影大変だっただろうから映画撮影というものに懲りたのかもしれない。逆にこれにはよく出たよなぁ。もうAAAとして人気だったろうに。ニッシーがすごいというその一点のみにおいても観る価値のある映画だとは思う。

【一番好きなシーン】
安藤サクラが家に上がり込んでくるところはキム・ギヨン『下女』を連想した。
まんまと追い出され暫くして帰ってみたら全員失踪してるのも良い。熱帯魚同様、実録犯罪モノ的な厭さがある。