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ロレンツォのオイル/命の詩のqqfowlのレビュー・感想・評価

5.0
子どもの頃見て以来2回目。大人になって見るとより面白かった。まず診断がつくやいなやALDの第一人者に診てもらうのがすごい。そして夫婦で論文を読み込んだ上で、専門家を集め、国際シンポジウムを開き、自らも議論に参加。ロレンツォのオイルを発見したのも凄いが、2人の行動力にはもっと驚かされた。

ロレンツォのオイルは、ALD患者の神経を侵す極長鎖脂肪酸が体内で生合成されないようにするもので、既に失われたミエリンを取り戻すものではないから、映画のラストで、夫婦はミエリンプロジェクトというのを始める。それが90年頃。でもロレンツォは2008年に誤嚥性肺炎で亡くなったそう。プロジェクトは間に合わなかったようだ。

この映画について検索すると、ロレンツォのオイルにALDの治療効果があるように取られかねない描写があり、そのことで批判がかなりあったらしい。そう言われてみると、極長鎖脂肪酸の血中濃度が下がってから、割と間もなく自力で飲み込めるようになったとか、数年後に簡単な意思疎通ができるようになったとか、そういう描写はあって、不思議だなぁとは思った。ロレンツォは成長途中の子どもだったから、有毒な物質が体内から除去されることで、部分的にミエリンが再生したのだろうか。その辺りについて詳しい情報がないか探したが、見つからず残念。今だったら専門家の見解が注釈で入ったりするのかしら。

極長鎖脂肪酸と長鎖脂肪酸を生合成する酵素は同じということをロレンツォの父親がひらめくときの、夢の場面がとても好き。同じ酵素だから、長鎖脂肪酸をあらかじめ投与することで、極長鎖脂肪酸の生合成を抑えられるのは何となく分かる。でも、ロレンツォのオイルの、オレイン酸とエルカ酸の配合比はどうやって決めたんだろう。ここまでの謎解明がエキサイティングだったので、細かいところも気になってしまう!!

そもそも夫婦が勉強を始めたのは、ALDの第一人者のお医者さんに言われたとおり、ロレンツォの食事から極長鎖脂肪酸を除いても、その血中濃度は下がるどころか上がったから。お医者さんはそこで、まあもうちょっと様子見ましょう的な感じなんだけど、親としてはそんな悠長なこと言ってられないと。お医者さんを疑ってばかりでも良くないかもだけど、患者としての直感、違和感、素朴な疑問を持ち続けることも大事だと思った。
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