ヘソの曲り角

ロレンツォのオイル/命の詩のヘソの曲り角のレビュー・感想・評価

3.8
これはデリケートな映画ですねぇ!
一般的な臨床医学の研究スピードだと遅いから自力で調べてアポ取って予算かき集めてALDの息子の治療をし続けた夫婦の話だがマジで奇跡的にノーミスであそこまで辿り着いてるように思える。そのため本編で何度も夫の台詞でフォローが入るように決して医学界が終わってるわけではないのを見る側は肝に銘じておくべきだと感じた。だから一番感じ悪い奴っぽく描かれる基金の夫婦も間違ったこと言ってないしあの人たちなりの最善を尽くしていると思う。でも、主人公夫婦の無謀でグレーな研究のおかげで医療が進歩してるという功績は当然素晴らしいことだと思う。この手の公的機関が頼りにならないなら自力で解決したるわ!って気概は西部開拓時代からのアメリカ魂って感じがするのは偏見かな。

本編で一番ヤバいキャラの妻が途中からちゃんと「この人の言動は酷いですよ!」と演出されててよかった。完全にキレ散らかしてたもんね。冒頭住んでたアフリカ時代の息子の友だち呼んで看護と英語教えるってなった時は本当にこいつ最低だなと思った。夫にも途中から怒られてた。エモーションの妻と理性の夫の両輪で突き進んでいく感じだったと思う。妻の母性本能的性格の強さとエモーショナルキャラはわりとステレオタイプだなぁと思ったが史実ものだし本人がそうなんでしょう。ジョージ・ミラー作品で描かれるの女性は母が多くて、その視点でのフェミニズム提起が主軸なんだと思う。

子どもの苦痛描写や冒頭の病名がつくまでの不可解さはオーメンとかペット・セメタリーとかあのへんのホラーみたいだった。とにかく息子が死んでしまうまでの時間との勝負のため非常に展開が早く活劇的な演出だったと思う。半分くらいまでのテンポ感は本当に異常。てかやってること科学者系の伝記ものと変わらないのよね。ニック・ノルティがすげぇかっこいい。スーザン・サランドンのキツい性格キャラの自然さがすごい。