BOB

華麗なる週末のBOBのレビュー・感想・評価

華麗なる週末(1969年製作の映画)
4.0
20世紀アメリカ文学を代表する作家ウィリアム・フォークナーのピュリツァー賞受賞小説を映画化。

1905年ミシシッピ州。11歳の少年が、家族が留守の週末に、友達である邸宅の使用人二人と共に、家の車を拝借して、メンフィスへと旅に出る。

"Gentlemen can live through anything. Gentlemen accepts the responsibilities of his actions. Bears the burden of their consequences even when he himself did not instigate them but only acquiesced to them."

隠れた傑作かと。男3人の愉快なロード・ムービーあり、少年の胸熱な成長ドラマあり、手に汗握るホースレースあり、泣かせる家族ドラマありと、とても満足度が高い。お気に入りのComing-of-age映画がまた1つ増えた。

古き良きアメリカの雰囲気漂う、コミカルなほのぼのロード・ムービーではあるが、Coming-of-age ストーリーとして、とても良く出来ている。脚本とキャストと演技がどんぴしゃ。

世の中を知らない純真無垢な金持ちのおぼっちゃんが、一生忘れられないであろう濃密な4日間を過ごす。狡いおっさんに金をとられ、娼館に泊まり、初恋をし、大切なモノを守るために命懸けの喧嘩をし、南部の人種差別や権力を悪用する警察を目の当たりにし、卑怯な大人と戦った。

不条理な大人の世界を次々と目の当たりにする中で、男には逃げたくても逃げずに戦わなければならない勝負があるということ、嘘や泥棒には代償が伴うということ、罪悪感への向き合い方を含め、自分のした言動に責任を持つということを学ぶ。

"マックイーン=華麗"みたいな短絡的な邦題が付けられているが、所謂マックイーン映画ではない。"華麗"とは無縁な田舎臭く汗臭く泥臭く人間臭い作品である。マックイーンは、近所のちょいワルおじさん的な立場で、富豪邸宅の使用人ブーンを好演している。格好良い車への憧れの眼差しと、全身泥塗れになって高笑いするシーンは、"キング・オブ・クール"だった。本作のスターを挙げるとするならば、マックイーンではなく、金色に輝く車〈1905年ウィンストン・フライヤー〉だ。

主人公の少年を演じた子役が素晴らしい。初めての経験に対する戸惑いやためらいがリアルで、深く感情移入できた。

ブーンの幼馴染であり、ライバル的な存在でもある黒人使用人ネッドも良いキャラクターだった。基本的には、能天気なお調子者なのだが、敵前逃亡しようとする少年に言葉をかけるシーンは、本作のベストシーンとも言って良いほどの名シーンだった。一気に作品が引き締まった。

"Camptown races"♪を歌いながら、ドライヴするシーンが微笑ましい。

"ボス"こと、厳しくも温かいお祖父さんも良かった。演じたウィル・ギアは、レッドフォード主演の『大いなる勇者』でベテラン山男ベアクロウを好演していた俳優。最後に全てを持っていった。こんな懐の深いお祖父さんになりたいものだ。

回想モノローグ形式である点と、ジョン・ウィリアムズの伴奏も、涙腺を刺激した。

邦題問題。個人的に、あやかるべきは、マックイーン繋がりの『華麗なる賭け』ではなく、同じくピュリツァー賞小説原作の名作『アラバマ物語』の方だと思う。自分なら『ミシシッピ物語』とでも名付けたい。客は呼べないと思うが、、笑

And so we were three, three reivers high-tailing it for Memphis. Oh, "reivers". That's an old-fashioned word from my childhood. In plain English, I'm afraid it meant "thieves".

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