冒頭、明らかにどす黒い海が画面一杯に映され、高い波がこれでもかとうねる。観ようと思っていた映画か、一瞬判らなくなる。現実が波で攫われるかのような感覚に陥り、開演わずか数十秒で全部持っていかれる。
始終、物語は溌剌と進み、登場人物たちは生の歓びで満ち、まさに青春讃歌。白黒フィルムだのに海は青く太陽は眩しく雲は白い。
舞台装置は極限まで少なく、それでいて画面に写る景色はほんの一部だが、意図的な余白が多く配されており、観ている側の想像を引き立てる。委ねられ方が半端じゃない。
ところで、ヴェーラのウクライナ・ジョージア・ウクライナ特集で3本目の鑑賞になるが、今のところ全作品に犬が出てくる。ロシア映画における犬で論文が書けそう。