Taul

乳房よ永遠なれのTaulのレビュー・感想・評価

乳房よ永遠なれ(1955年製作の映画)
4.0
『乳房よ永遠なれ』初鑑賞。田中絹代監督恐るべし。女流歌人の話を女性脚本家で作った意欲作。当時としてはきっと目新しく、男性には撮れないような女性の体と性についての描写が多くあり、また演出スタイルも様々な工夫があって見応えがある。主人公を日本映画が伝統的に描いてきた涙を誘う薄幸で可哀そうな女性とせずに、病床の中でも逞しいと思えるほどのエゴやセクシャリティが強く打ち出されていることが驚きで、映画史的にも特異な作品ではないだろうか。

『乳房よ永遠なれ』溝口のような移動、成瀬の視線での動き表現など、巨匠達の影響を入れつつ、縦や奥行きを大切にした構図や、地面からのカメラ位置など、とても面白い。思いきった暗さや靄を取り入れることも。それと同時にまだ手慣れた感じはなくシーン毎の出来不出来も散見された。なお、凝ったときはサイレント映画っぽい演出になり、彼女のルーツと関係するのかも知れない。

『乳房よ永遠なれ』溝口、成瀬、小津、木下惠介ら男性のカメラからずっと大女優田中絹代を見てきた。不幸な女性の役ばかりということもあって男性不信になったらしいが、女性はそんな男が喜ぶために可哀そがる単純なものではないと貯めていたものを吐き出したような、真に迫るものがあった。後半の映画的な爆発が凄い。少し前の再上映時に乗り遅れたが見られて良かった。
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