キューブ

未来を生きる君たちへのキューブのレビュー・感想・評価

未来を生きる君たちへ(2010年製作の映画)
4.5
 あらすじだけ見ると、デンマークとアフリカで起こる事件が絡み合う群像劇を想像するかもしれない。でも実際はデンマークの地方での2つの家族の崩壊と再生がメインだ。
 この作品でのテーマは2つあると言える。クリスチャンの父親は「死を受け入れる」ことを子供に教えようとする。幼いが故に(といってもこれぐらいの年齢だったら子供なりに理解できると思うが)母親の死を受け入れられないクリスチャンは「敵に復讐」することで、心の溝を埋めようとする。なぜクリスチャンがこれほどまでの行動に走るのかは最後の方まで分からない。だがその事実を知ったとき、観客は大人と子供の決定的な違いを目の当たりにする。
 エリアスの父親アントンは「復讐は何も生まない」ということを子供に身をもって教えようとする。エリアスはいじめっ子をクリスチャンが撃退したことにより、仕返しすることを良しとするクリスチャンに心を寄せていく。彼らを歪んだ感情でつなげているのはいじめっ子を脅したときに使ったナイフであると言える。武器を持つことで自分の肉体的、精神的弱さを2人は隠しているのだ。そんな2人にアントンはひたすら復讐することが無意味であることを教えようとする。だが彼ら大人たちも心に傷を負っている。自身が困難に直面した時は傍観者となってしまうのだ。
 この矛盾を抱える人々を監督は時に優しく、時に厳しく描き出す。あまりにも複雑な人間の心情を描き出そうとしたためか、いくつか不自然な点が存在している。しかしそれでも心を揺さぶるパワーは衰えない。一度見たら忘れられない、そんな映画だ。
(11年9月18日 映画館 4.5点)
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