明宏

アキラ AKIRAの明宏のレビュー・感想・評価

アキラ AKIRA(1988年製作の映画)
4.2
さすがのハードコアぶり。四年ぶりくらいにみた。東京五輪もだんだん近づいてるし、あとなんとなくブラックパンサーの二項対立に感化されてこれを見たくなった。
人がとにかく動く動く、手前の人も奥の人も。背景と人物のレイヤーも一体になっていてアニメ映画としてここまでやればちゃんと世界に通用するんだなー。調べるとこれは10億円超制作費かかってて興収で7.5億円しか回収できなかったらしい。コミックス、グッズ、海外放映などのデータはわからない。けど画面としてこのクオリティ届かせるにはお金がそれだけ必要なんだなー。ハードなSF描写にどこかの民族音楽を組み合わせたり目指すレベルが全然違うし、追随を許さないな。

キャラクターの口の動き、呼吸による肺の膨らみや、メカのぶつかり合いで弾ける火花や残像などなど、アニメーションとして人の手でかき表すことで浮かび上がる動きの感動に満ちている。
原作者自らが脚本監督ってことで、漫画にあったペンの筆致や彩度の高い温かみのある色味がちゃんとアニメに移行されてて素晴らしい。

大友克洋の短編集にあった『RUN』って短編のあとがきには『タクシードライバー』に影響されたとあって、ほかの短編もアメリカンニューシネマっぽさがある。物語は本格的な作り込みをするけど、終わりは暗くて遣る瀬無い、歪みの境地といった感じでAKIRAにもそのノリはあるなーと思った。

最高な台詞、場面多々なので定期的に観たい。金田のバイクほんとかっこいいー 『TRON』のシドミードデザインのライトサイクルから影響受けてるらしい。


関係ないが、大友克洋キャラメカデザインの『FREEDOM』はAKIRA的エッセンスをファッションで振りまいたような酷い作品でかなりがっかりした。ストーリーの整合性も無ければ、女性キャラクターの描き方も男性が理想とする都合のいいステレオタイプの女性キャラ。全編通してセンスの古い滑りっぱなしのおじさんギャグが寒すぎて、大友克洋への営業妨害になっていると思う。(企画としても途中で降りているみたいで脚本にも関わっていなそう、というかこのクオリティで関わってるわけがない)せっかく宇多田ヒカルが楽曲提供しているけど、OPだけだし。(神風動画のOPは実写とCG混ぜたり、大友克洋の絵柄をポップアートとして消費してて素晴らしい出来) 久しぶりにいやーな気持ちになった。
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