アンパン

はるか、ノスタルジィのアンパンのレビュー・感想・評価

はるか、ノスタルジィ(1992年製作の映画)
5.0
直接に物語の繋がりはありませんが、実は「さびしんぼう」の完結編です。

監督は 「さびしんぼう」 の橘百合子の家を娼家と設定されており、この事から恥ずかしいからとヒロキに送ってもらうのを拒んだとされています。大林宣彦さんとしては、二人の恋は成就しておらず、ラストシーンは妻や娘が百合子に似て見える日にはヒロキの心には 「別れの曲」 が聴こえてくるとなっています。

そして、次作 「姉妹坂」 に出演されていた宇野重吉さんを歳をとったヒロキとして 尾道で 「さびしんぼう」 の続編を撮ろうとされていたようです。 「歳をとったヒロキが尾道に帰って来ると、さびしんぼうが少女のままでいた。少女はさびしんぼうの娘であった。」 とあり、内容が 「はるか、ノスタルジィ」 と重なっています。 「姉妹坂」 には富田靖子さんも出演されており、百合子の娘の役は富田さんが予定されていたようです。富田さんで「さびしんぼう2」を撮ると書物に書かれております。しかし、宇野重吉さんが亡くなられた事で実現しませんでした。

そして、時を経て尾道から山中恒さんの故郷小樽に舞台を移し 「はるか、ノスタルジィ」 となったと思われます。原作は映画の為に書き下ろされています。

あのお稲荷様の前での着物姿の百合子とヒロキの別れのシーン。監督はお稲荷様から先は遊郭と設定されており、それで百合子はヒロキをそこから先には通しませんでした。こちらでは父 統策を探しに遊郭に来た佐藤弘が三好遥子と会ってしまい、見られた遥子は首を横に降り、娼家に逃げ込んでしまいます。この時の着物姿の三好遥子が百合子であり、佐藤弘はヒロキとなります。メイクの岡野千江子さんには、因島での別れのシーンを思い出してメイクをしてほしいと伝えてあったそうです。

そして、ラストシーン勝野洋さんのナレーション、はるかへの 「昔の事などもうまるですっかり忘れてしまったような顔をして。それでいいのだ生きると言う事は多分そう言う事なのだ。」 こちらと、「さびしんぼう」でのヒロキから 「ひょっとして母さん 昔 俺じゃないヒロキって子知ってた。」 の問いかけに母は、 「さぁ、昔の事って覚えているようでよく覚えていないものね。」 と かわしてしまうこのシーン。この二つはテーマが繋がっているように思えます。
ラストの 「はるかは今でもショパンが好きなのだろうか。」 これは、ヒロキから百合子に投げ掛けられた言葉のように思え、私には 「百合子は今でもショパンが好きなのだろうか。」 と 「さびしんぼう」のラストシーンが見えてきました。

「廃市」 のDVDの特典映像の監督インタビューの中でも、 「はるか、ノスタルジィ」 の事を 「さびしんぼう」 のその後の物語と言われる 「はるか、ノスタルジィ」 とハッキリと 解説されております。
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