90年代サブカル・オサレ映画の代表。
あの頃、センスの良い映画と言えばこれだった。お洒落気取りたかったらウォン・カーウァイを見れば良かった。
そんな時代から20年以上ぶりに観たら、この何の目的もなく流れるストーリーなき物語の本当の良さを身に沁みて感じた気がする。
返還直前の香港で、出逢ってスレ違って、また再会する人々の日常。流れていく時間の中で浮遊する感覚。とりとめのないダイアローグとモノローグの混声。
クリエイティビティの塊みたいな映像の洪水の中で鳴り響く音楽に酔って、まどろむ映画なんてカーウァイにしか撮れない芸術。
恋する惑星と天使の涙、ブエノスアイレス以降この夢のように流れるようなカーウァイ映像は消えた。それはそれで良いのだが、まるで青春時代に一瞬見た夢のように何となく忘れがたくて切ない。
もう香港があの頃に戻れないように、我々の青春サブカルチャーもゆっくりと泡のように消え去っていく。
夢のように淡くて儚い思い出が…