「破戒」
冒頭、牛と人間。塩と体当り、死。
常闇の山々、林を提灯光で照らす男二人。
小屋に集い、部落民、苦しみ、社会の偏見、抵抗、今、一人の雑草の如く強く青春を求める青年教師が映される…
本作は島崎藤村の原作を既に炎上等で絡みがあった市川崑が市川雷蔵を主演にし、
撮り上げた青春映画で、
既に昭和二十三年に木下恵介が監督している為、
二度目の映画化という事になる本作の脚本は監督の妻である和田が担当、
撮影は炎上で市川崑の作品のクオリティを高めたカメラマン宮川一夫、
他の出演者に黒い十人の女や犬神家の一族で市川崑の作品に出演して来た岸田今日子に、
市川崑の過去作の野火に出演した船越英二、
同じくビルマの竪琴に出演した三國連太郎などが大集結した名作でこの度、
等倍超解像処理されたBDにて再鑑賞したが素晴らしい。
物語は部落民出身の小学校教員の苦悩の姿を描きながら文明批判を込めて日本の悲劇な一部を映像化した島崎の代表作である。
いや〜頭上ショットや引きの画作りは流石市川崑と惚れ惚れする。
これ程までにモノクロームの世界観と日本の風土と原風景が合うとは…
それにカット割も上手く、ズーム、アップと凡ゆる手法で捉える画が良い。
雪降るラストのシークエンスは大感動する。
これこそ人生、今日の人間を見た画期的な共演者による感動的な芝居が輝きを見せる。
てかデビュー作であった藤村志保がこんな巨匠だらけの現場で当時感激と地獄を味わっていたと思うよ。
だって雷蔵のヒロイン役で監督は市川崑、撮影は宮川って最強の輪の中にいる訳でしょ…
それに美貌の雷蔵を更に引立てるのはやはり市川崑で、
彼の作品の雷蔵は凄く美男子だ。
炎上からぼんち、そして破戒と本当に美しい芸達者なお方だ。
今日的課題な階級差別じみた内容も含め、愛と苦しみ、
それに悶えて果てしない慟哭に必死に耐えるこの孤独の青春ったらかなりキツい…感動する。
脚本の和田を改めて凄いと思った瞬間である。
破戒は超絶お勧めです。
是非観て欲しい一本で大映の名作のひとつだ。