トルティージャ

愛を読むひとのトルティージャのネタバレレビュー・内容・結末

愛を読むひと(2008年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

じっくり集中してみることができた。


以下、他の人のレビューを読んで腑に落ちたこと。

序盤のハンナの言動はどこかヒステリックで少女っぽさがあった。15歳の少年と対等に喧嘩することに違和感があった。ただ、法廷で実直に答える姿勢や雨の日に見知らぬ男の子を助けるところなど、決して"悪い人"ではないのだろう。

そして彼女は識字能力がないことを恥じて向き合わないまま、大人になってしまっていたのだろう。誰しも改めて自分の弱いところと向き合うことには恐れがあると思うが、それを蔑ろにしてしまうことの恐ろしさを描いているのではないだろうか。

読み書きを必要とする職への昇進にも向き合わず職を変えた先で、与えられた仕事をこなしていたら罪に問われたハンナ。他の看守たちは保身のために嘘をつく程度の反省(といえるだろうか)、ともかく罪の意識があるのに対してハンナは理解できていないように見えた。
そしておそらくそれは、ナチス政権時代に無邪気にユダヤ系の人々を奪った多くの人々と重ねているのだろう。

ハンナは文字を書くことを学んだ末に、罪と向き合うことができたのだろうか。
ラストの結末は何を思ってのことなのだろう。
とはいえ、彼女だけの罪ではない。はたして自分が同じ立場なら、正しい倫理観をもって主張し続けられるだろうか。浅い知識ではあるが、そうして生まれた悲劇がナチスドイツ政権だと認識している。

そしてマイケルは、レイプされた被害者とも考えられる。誰にも言えないような恋愛(?)体験から、常に他人と距離をとってしまう。ハンナに対しては、愛情を抱いていたのか、裁判の時には軽蔑の感情もあったのか。自分が焦がれた相手がこんなにも無知で、無邪気に罪を犯していたことに対する怒りや呆れから、面会も手紙の返事もしなかったのだろうか…
また別のタイミングでは、自分だけが罪を軽くすることができたのに、それをしなかったことへの罪悪感から朗読を始めたのだろうか。ともかく、朗読を通して改めて少年時代からあの裁判までの自分達と向き合って、心を整理していったのだろうか…

要所要所での人物の表情からはいろいろな想像ができてとても面白かった。

また数年後、勉強してからまた見たいと思う。