ゆかちゃい

愛を読むひとのゆかちゃいのネタバレレビュー・内容・結末

愛を読むひと(2008年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

文字の読み書きだけが教養じゃない、と真っ先に感じた。この映画は愛と教養がテーマだと私は考える。

ハンナは具合の悪い見ず知らずの男の子を助ける所から始まり、歌や小説に感動して泣いてしまう様な繊細な感性の持ち主で、ロマ族(その時代に迫害されていた、ジプシーとも言う民族)で無ければ彼女はきっと文字の読み書きができる知的な人物だったはず。
アウシュビッツで看守を勤めたハンナの裁判の時も、自分の保身に走らずに有りのままを話したその姿勢は正しくて美しい。
そして6人いた看守から裏切られ、文盲を隠す事によりハンナは一人だけ終身刑を言い渡されてしまう。

マイケルは唯、15歳のひと夏の恋人ハンナを永遠に愛した。その愛で牢獄にいるハンナへ小説を朗読したテープを送る様になる。ハンナはそれにより、文字を学んでいく。まさしく、愛を読んでいる。

深く愛したマイケルとようやく一緒になる出所する日が来た、その日の朝に自決をするハンナ。
その自決する描写が美しく、映画の真髄を見た気がする。机の上に本を6冊程重ねてそれを踏み台に首吊りをする。
文盲であるが故にアウシュビッツの看守を余儀なくされ、大罪を犯したハンナ。そして本を読める様になり、自分の罪の重さを理解し認め自死を決意する。自死は決して美しい事では無いけれど、ここでハンナがそれを選ぶ事によってこの映画は綺麗に纏まるのだと思う。
知らない事は怖い。知らないです、で済まされないから怖い。
彼女を死に至らしめる物は時代や偏見、そういった物なのに。ハンナは文盲であった時から教養のある賢い女性なのに。

最初のマイケルとの恋愛を描いてるシーンではハンナの美しさが分からなかった。しかし、自死を選び、その牢獄の部屋の中を見て彼女の美しさを本当に理解した気がした。
マイケルへの愛情が籠もった部屋。朗読されたテープがキチンと保管され、壁にはお気に入りの小説の切り抜き、花や植物の写真が一面に飾られている。簡素で冷たいイメージがある監獄がハンナを隅々から感じる暖かな部屋になっている。
彼女はここで文字を学び、小説を愛し、マイケルを愛した。彼女の美しさが浮かび上がる。
(これは以前の5.6年前の私のレビューだが、彼女はマイケルを愛していたのか現在の私は疑問である)

マイケルの直向きな愛も素晴らしいが、ハンナの変わっていく教養の価値に感銘を受けた。
教養と時代、ナチスドイツ、アウシュビッツ、ロマ族、様々な事を愛の観点から知れた作品だった。美しく物悲しいロマンス。
なれるならハンナの様な美しい教養を身に付けられる女性になりたい。
ゆかちゃい

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