BOB

追いつめられてのBOBのレビュー・感想・評価

追いつめられて(1987年製作の映画)
3.5
『大時計』(48)を基に、アメリカ国防総省に舞台に移した、ロジャー・ドナルドソン監督のポリティカルスリラー。

国防長官の愛人と親密になった海軍士官が、彼女の殺人犯及びソ連の潜入スパイ"ユーリ"の濡れ衣を着させられる。

"Let him go." "He'll come back. Where else can he go?"

良作。冷戦下の米ソスパイ合戦を背景に、一人の美女の死を発端とする巻き込まれ型陰謀スリラー。権力の腐敗、同性愛といった辺りもキーポイントか。

前後半で作風が一変する。前半は美男美女による80's映画らしい無邪気なラブロマンス、後半は二転三転するスリリングなサスペンスアクションが繰り広げられる。

"追いつめられて"いく主人公トム・ファレルのキャラクターが興味深い。捜査の進展と共に、自分が置かれた状況も刻一刻と変化し、彼の心の葛藤もより複雑になっていく。ラストのツイストは唐突かつ表面的なものにも感じられたが、あまりに予想外の展開だったので素直に驚いた。このキャラクターの本質をよくよく考え直してみると、理解できなくもない。

役者たちが魅力的。
ケヴィン・コスナーとショーン・ヤングのホットな美男美女コンビ。ケヴィン・コスナーは同年公開の『アンタッチャブル』での活躍と共にハリウッドスターへと駆け上がる。『ブレードランナー』で注目を浴びたショーン・ヤングは、天性の(?) 魔性の女ぶりを惜しげもなく披露する。2人がタクシー内でメイク・ラブする直前に、タクシー運転手に仕切りを上げるよう頼むという印象的なシーンがあったのだが、あれはケヴィン・コスナーのアドリブだったとのこと。

うっかり恋人を殺してしまった罪を部下に着せようとする国防長官役にはジーン・ハックマン。優柔不断で頼りがない。それより、彼の側近役ウィル・パットンの怪演が光っていた。

・メル・ギブソンとパトリック・スウェイジがオファーを断ったことにより、ケヴィン・コスナーに主役の座が回ってきた。
・ディーナーパーティーでマオリ族がハカを披露するシーンがあったが、あれはロジャー・ドナルドソン監督による母国ニュージーランドへの敬意の表れ。
・無名時代のブラッド・ピットが、パーティーのゲストの一人としてワンシーン出演している。

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