時間が経つにつれて、映画の良さがわかり、感動が増幅されます。「伝説の映画」と言われ、たくさんの人に愛されていることが分かりました。
マレーシア映画です。
普段、アジア系の映画は観ないのですが、とても良かったです。
マレーシアという他民族が暮らす街で、「タレンタイム」という音楽コンクールがあり、それに挑戦する若者を描いた青春群像劇なのですが、
話自体は簡単ですが、これが非常に深い。
多民族社会であるマレーシアの内情を知らないと、「ん?」「なぜ?」となる点が多いと思います。逆にそこが理解できるとさらにこの映画の素晴らしさが分かります。
マレー系(56%)、中華系(24%)インド系(7%)、先住諸族(11%)の人々がひとつの国の中で共存します。言語も、英語やマレー語、中国系の方言やタミル語、そして耳が聞こえない男の子は、言語でなく手話を通じて心を通わします。
それぞれの登場人物の民族や宗教を信仰しているのかという点がキーになってきます。
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・ムルー:父はイギリス系とマレー系の混血者。母はマレー系。イスラム教の家庭のピアノが上手な女の子(ちなみにムルーの家族は他民族が集う家庭)
・マヘシュ:インド人。ヒンドゥー教徒。耳が聞こえず、手話で会話する。ムルーに恋する。
・ハフィズ:マレー人でイラスム教徒。転校生で学業も優秀でギターも得意。病気の母を持つ。
・カーホウ:中華系。父が学業に厳しい。成績トップの座を奪われ、ハフィズに対して敵意を持っている。
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マレーシア社会では、「イラスム教徒」であるかが重要なことであるみたいです。
マレー人は基本的にイスラム教徒であり、
華人は、非イスラム教徒。
法律上では、イラスム教徒と非イスラム教徒は結婚ができません(結婚するには改宗が必要で、マレーシアではイスラム教徒が他の宗教に改宗できないため、非イラスム教徒がイスラム教に改宗することになる)
原住民系(マレー系と先住諸族)が移民系(中華系とインド系)よりも優遇されているという現実があるということも知っておくと、登場人物の関係性がわかります。
他者への寛容の気持ちを持つこと。
マヘシュがムルーに手話で伝えたこと。
マヘシュの叔父の想い。
ハフィズの母親の愛。
ラストにハフィズとカーホウが抱き合ったこと。
全てが愛おしく、優しい気持ちにさせてくれます。
劇中で流れる「I Go(アイ・ゴー)」、「Angel(エンジェル)」が心に染み渡り、この曲が流れたときは鳥肌が立ちました。
自分以外の誰かの大事にしていることを認め、大切にしたいと思える素晴らしい映画でした。