うめ

パイレーツ・ロックのうめのレビュー・感想・評価

パイレーツ・ロック(2009年製作の映画)
3.6
 リチャード・カーティス監督作。1966年から1967年にかけて最盛期を迎えていたロック音楽ばかりを流す海賊ラジオ局の日々の様子を描く。

 冒頭の説明によると当時、国営であるBBCラジオがポピュラー音楽を流すのは一日に45分だけ。そこでロックが聴きたくてうずうずしているイギリス国民はオンボロ船から発信される電波を受信してロックを楽しんでいたのだ。この海賊ラジオ、実際に存在していたようで。「レディオ・キャロライン」や「レディオ・ロンドン」といった海賊ラジオがあって、今作の人物や背景もそれらを基にしたそうです。1966年にまさかイギリスがそんな状況にあったとは知りませんでした。そして、実際にあんな奴らがいたのかと思うと驚きです(笑)

 あんな奴らとは?四六時中ロック音楽をレコードでかけ、Fワードを電波に乗せてみたり、女の子を船に呼んで遊んだり、皆でバスケしたり…海賊ラジオのDJたちは皆、中高生の男子のノリです、完全に(笑)終始遊んでばかり。…でも終盤、まさにロックな展開が起きて(笑)、気づかされます。「あぁ、バカでもいいじゃないか」と。そりゃ世界中こんな奴らばっかりだったら困るけれど(笑)、でもバカになって何かやる奴が意外と世を、周りを変えたりするもんで。ロック音楽が生まれた要因の一つも、こんな「バカやってやるぜ!」っていう雰囲気だったんじゃないでしょうか。監督のメッセージもこの辺りにあるような気がする。

 ただ映画の流れから見てみると…バカやってる時間が長いっ(笑)!一応、主人公らしき少年カールがいるのだけれど、彼がいつも映画の中心にいるかと言えばそうではないし、かと言って(終盤ははっきりと明示されていたが、それまでの流れで)DJたちの背景や感情が見え隠れする訳でもない。終盤まで海賊ラジオ内の話の軸があまりなくぶれてしまっていたのは残念だった。またコメディと言いつつも、笑えるシーンが少なかったのも期待外れではあった。

 また冒頭やラストに背景の説明があったが、何故あの当時、ロック音楽が支持されていて海賊ラジオのDJたちが何故あれほどバカなことができたのか、少し説明や描写があるとよりメッセージが伝わったのではないかなぁなんて思った。当時を過ごした人なら、あの空気感は説明されなくてもわかるだろうが、何も知らない人だと「なんであんな浮かれちゃってるの?」ってなってしまう危険が(笑)ちらっと匂わす程度でいいのであったら良かったかもしれない。

 しかし、DJを演じた俳優たちのはっちゃけぶりは最高で、終始流れるロック音楽と相まって、DJが楽しんでいる様子がよく伝わってきた。特にビル・ナイ!スーツを着てジェントルマンな雰囲気なのに、冗談を言ったり音楽に合わせて踊ったりとユーモアたっぷり!彼がリチャード・カーティス監督作全てに出演しているのも頷けます。反対にケネス・ブラナーにはもうちょっとはっちゃけて欲しかったかなぁと…若干キャスティングミスなのかなぁとは思うんですけどね。

 ちなみに今作はアメリカ公開でのタイトルが"Pirate Radio"、邦題が「パイレーツ・ロック」となっているが、原題は"The Boat That Rocked"でダブルミーニングになっている。観る前は疑問に思った原題だが、観て納得のタイトル。本編を観て確認して頂きたい。

 しかし自分も含め、最近バカやってる人っていないよなぁ〜(いてもおそらくどこか黙殺されて見えない状態にあるんでしょうけど)ってもやもや思っていたので、今作を観て「バカやろうぜ!」って言われてる気がしてならなかった。実際にやるのは難しいけれど、「くだらねぇ〜」って言って心に余裕とバカな心を持つのも時には大事なのかも。