近本光司

欲望のあいまいな対象の近本光司のレビュー・感想・評価

欲望のあいまいな対象(1977年製作の映画)
4.0
コンチータ、コンチータ! フェルナンド・レイが熱を上げる若い女の役どころを二人の異なる女優が交互に演じている。欲望のあいまいな対象。老年期に差し掛かろうとする金持ちの男は甘い言葉を弄して彼女(たち)への愛を嘯くが、この二人一役の仕掛けが示すように、じつは若い女という記号にしか興味がないことが皮肉めいて描かれる。一方のコンチータは憐れな老人をたぶらかして金を毟り取り、性交を頑なに拒みつづける(絶対に脱げないパンツ最高)。セビーリャでも、パリでも、あるいは別の町でも、目的の判然としないテロリズムが横行する。それにしても冒頭に描かれた車の爆発がすごすぎてひっくり返りそうになった。遺作となった本作の最後に、ブニュエルは再びパリのパッサージュを爆発させた。なんとブニュエルらしい幕引きだろうか。