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欲望のあいまいな対象のleylaのレビュー・感想・評価

欲望のあいまいな対象(1977年製作の映画)
3.9
再鑑賞。
ブニュエル77歳の時の遺作。これまた何ともシュールレアリスムで、タイトルどおり「あいまい」なことだらけ。そもそも主人公が2人1役という斬新さ。

スレンダーなフランス人(キャロル・ブーケ)と肉感的なスペイン人(アンヘラ・モリーナ)、見た目も性格も違う女優が1人の女性コンチータを代わるがわる演じる。キャロル・ブーケのデビュー作だそうです。

若い女性に振り回され、寸止めをくらってジラされ、ますます盲目になっていくブルジョワおやじの姿を滑稽に描いたシニカルな作品。ヒロインを2人1役にすることによってブニュエルお得意の不条理感とドS感が際立っています。きっと何人が演じてもよかったのかも。

そもそも愛ほど曖昧なものはなく、性欲なのか愛なのか、コンチータのどこを愛してるのか、誰でもよかったのでは?もはや全部悪夢?…と、シンプルなはずなにいろいろ考えてしまうシュールさが楽しい。監督は神と同じぐらい愛も女性も信じていなさそう。

人間の曖昧さと滑稽さをブニュエル流に描いた哲学的な作品に思えました。

何度も出てくる麻袋やテロ描写、刺繍するおばさんの意味はさっぱりわからなかったけど、ブニュエルらしい観客を惑わすお遊びなのかとも思う。ブニュエルは最後まで変態で、人を煙に巻く鬼才でした。

インスパイアされたというディートリッヒ主演の『スペイン狂想曲』、ブリジット・バルドー主演の『私の中に悪魔がいる』と観比べてみたら、ブニュエルの変態性と奇才ぶりが浮き彫りになりそう。
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