おかげ

ゆれるのおかげのレビュー・感想・評価

ゆれる(2006年製作の映画)
3.5
【一人一人が抱える「後ろめたさ」の骨頂】

あらすじ
上京してカメラマンとして働く猛と、田舎で実家の仕事を継いだ兄の稔。母親の葬式をきっかけに実家に帰った猛は、兄に誘われ、幼馴染のちえこと3人で渓谷へ観光に行くが、兄と共に吊り橋の上にいたちえこが川へ落下し死亡する。ちえこの死の真相を知るのはその場にいた稔と、遠くから目撃した猛のみ。猛は兄の無実を証明しようと必死になるが、稔は意に反して自供してしまう。ちえこの死の真相はなんなのか、そして猛と稔、それぞれが抱える思いとは…


ちょっと今回は考察してみました。
(ネタバレ含むかもです)


この映画はいろんな人の"後ろめたさ"を描いた作品だなと感じました。


オダギリジョー演じる猛は、兄に実家を任せて一人で上京。おそらく兄が田舎町から抜け出せるような性格じゃないってことを利用して自分だけ逃げるようにして出ていったんだろうなぁ。それを申し訳ないと思いながらも自分勝手に生きてきたことに後ろめたさがあったでしょう。
そして兄が想いを抱いていることを知りながら、自分に好意を抱くちえこの気持ちを利用し無下に扱う。まじかこいつってなりました。が、いますよね、こういう人…帰宅して兄と話すのに気まずそうにしている姿を見ると、こうなんのわかってたやろ…って思うけど、衝動で行動しちゃうタイプの人である、ということが分かりやすかったですね。最後の証言も頷ける。

稔は稔で、言わずもがなちえこの死に関与していること自体大きな後ろめたさを抱いている。

父親は、稔に実家や仕事を任せっきりであったことに、きっと彼が捕まったことで気づいたでしょう。フォーカスされてはいないですが稔が事件で起こしてしまった行動は自分が追い詰めてしまったからかもしれない、という後ろめたさがあったのではないかなぁと思います。

そして、ちえこの母親。
普通であれば稔や猛に、もっと怒りをぶつけても良いところだと思いますが、そうなっていない様子を見ると、自分自身が娘を差し置いて再婚し、新たな子供もできて家族を作ったことについて、もしかしたら、ちえこに対する後ろめたさがあったのではないかなぁと。
再婚について娘と向き合いきれていない、ということもあったと思います。


こんな一人一人の後ろめたさが散りばめられた作品だったので見ていて苦しみでした。
共感よりも、苦しみの方が強かったです。

最後に真相がわかるシーンにはおおお………と唸ってしまいました。
おかげ

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