はぎはら

ゆれるのはぎはらのレビュー・感想・評価

ゆれる(2006年製作の映画)
4.5
「永い言い訳」を観て、あらためて観たくなった本作。

誰もが心の底に、やりきれない気持ちをうっ積させて生きている。言葉にして伝えられれば少しは分かり合えるのに。

でも、誰でもそうだが心の底に渦巻く気持ちはなかなか言葉にできない。意図して隠しているわけではないのに、いつの間にか隠し事がたまっていく。

この映画は兄(香川照之)と弟(オダギリジョー)がお互いを理解する過程を描いているのだが、それはお互いが隠してきた対抗心や無意識の侮蔑が明らかになることでもある。

普段当たり前のようにやり過ごしている日常がどれだけ不安定なのかをこの映画はリアルに表現していく。

私たちの日常はあの吊橋のように、ふとしたはずみでギシギシと揺れ動く。

弟は結果的に兄を裏切る。弟の感情は裁判という場で初めて獲得したものだ。それがなんとも切ないが、それは兄を理解するために必要なプロセスなのだろう。

終盤、弟が目にする16ミリの映像の意味、兄の事を、兄との関係を、深く考え続けなければ、見えなかったに違いない。

果たして、あの映像が兄の全てを捉えているのか、と言えばそれは分からない。
だが少なくとも弟にとっては、兄とつながるためのかけがえのない真実に違いない。

映像とは、映画とはそのようなものだ、と西川監督は伝えたかったのだと思う。
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