綾鷹

ラヂオの時間の綾鷹のレビュー・感想・評価

ラヂオの時間(1997年製作の映画)
4.5

こんないい作品見たら仕事頑張るしかないじゃんか、、

業種が近いからこそセリフの端々にもの凄く響くところがあり堪らなかった。

仕事人の小気味いい台詞回しがイカしてるし、本当に三谷幸喜監督はドタバタ群像劇に喜劇と感動のエッセンスを盛り付けるのがズバ抜けて秀逸だなと感じた。

内容としては、バーターキャンスティングに気に食わない女優との一悶着から生放送終了までの一部始終は、最後までチョコたっぷりのトッポ状態で、俳優陣の名演技の応酬もあり大満足だった。

この世の板挟みに生きる全ての人に捧げる魂のロンド以外の何物でもない作品。



〜以下ネタバレ&好きなセリフ〜


★ “ここにいるやつらは誰もいいものを作ろうなんてこれっぽちも思ってない”
目の前の職務に忙殺され大事なものを忘れがちになってしまう。でもその中で、音に対するこだわりを見せる元効果マンの熱いセリフやディレクターの工藤がどんなくだらない脚本でも作家の書いた通りに作るのが俺の仕事なんだと吐露するシーンなど憎み口を叩きながらも”プロ”が”プロの仕事”をする展開には目頭が熱くなった。


★”人間に想像する力がある限り、ラジオドラマには無限の可能性がある、僕は好きだなラジオドラマ”

★私の本じゃないと言ってください
というセリフに対して、

“あなた何もわかっちゃない。
我々がいつも自分の名前が呼ばれるのを満足して聞いていると思ってるのですか。
何もあなただけじゃない、私だって名前を外してもらいたいと思うこともある。
しかしそうしないのは私には責任があるからです。

どんなに酷い番組でも作ったのは私だ。
そっから逃げることはできない。
満足いくもんなんてそう作れるものじゃない。
妥協して妥協して自分を殺して作品を作り上げるんです。
でもいいですか、我々は信じてる。
いつかはそれでも満足のゆくものができるはずだ、その作品に関わった全ての人とそれを聞いた全ての人が満足できるものが。
ただ今回はそうじゃなかった、それだけのことです。
悪いが名前は読み上げますよ。
なぜならこれはあなたの作品だからだ、紛れもない”

これを大人のルールの枠組みの中、板挟みの中でもがいた牛島さんが言うからこそ染みるものがあった。
綾鷹

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