Rita

マッチ工場の少女のRitaのレビュー・感想・評価

マッチ工場の少女(1990年製作の映画)
2.6
現代アートハウス入門
ネオクラシックをめぐる七夜 Vol.2 第2夜

恋をしたいけど相手は自分ではなく、他の人を選ぶ。派手な格好をしてバーに行き男を振り向かせようとするが、男は一夜の関係しか求めておらず期待して会いに行くことで嫌われてしまう。

表情で語らない。言葉でも語らない。その代わりに彼女の気持ちは、身の回りで起きていることから読みとることが出来る。魅力的な作品という訳ではないが、じっくりと観察すると作品の謎が解けてくるような気がする。話の内容よりもオープニングでマッチが出来上がるまでの工程が黙々と流れているのが一番印象的だ。工場の大きい機械音やマッチだけが脳内に過る。

アキ・カウリスマキ監督は作品に関してあまり説明をしていないようなので単純なようで難しい作品でもある。これは映画ではなく芸術の方向性に向いている。少し音楽面も含めてジム・ジャームッシュの雰囲気があった。ジム・ジャームッシュ監督の音楽も個性的で好きだが、この作品の音楽の歌詞で彼女の気持ちや状況を語るのが好きです。

Badding Rockersの「Se jokin sinulla on」で
"お前はブスだと他の奴らは言うけどな。俺は構わねぇ。好きだよベイビー"という歌詞が凄い好き。

タイトルにある少女というより少し歳の女性でしたが、大人になった今でも母とその彼氏と暮らし、自分で稼いだ給料も取られて全くの他人と過ごしているかのような生活。彼女の面白味のない生活を淡々と目で追っていく。植物園のシーンは彼女が何かを考えている姿を映していて好きです。彼女が殺人を犯した時、とても静かで何も起こらなかったかのよう。ラストに警察らしき2人に連行されますが、全く抵抗せず去っていく。辛い日々から解放されていくように思えた。
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