荒野の狼

黒猫・白猫の荒野の狼のレビュー・感想・評価

黒猫・白猫(1998年製作の映画)
5.0
ことごとく、徹頭徹尾わざとやっているのに、そうは見えないのは何故だろう。これが解明できたら立派な博士論文が書けるはずだ。間違いなく、アテに来ているコメディなのに、それ以上の何かがある。その何かを言葉で言い表せたら、芥川賞を取れるだろう。各シーンがとことんそんな笑いのエッセンスに満ち溢れているのだが、一発ギャグでしか笑えなくなった日本の若者達には、多分「すべる」映画にしか見えないだろう。オチのない落語だ、と年寄りなら言うだろう。しかし、そう言う映画ではないんである。あえて表現するならこの世は全てが「同時進行」って事に尽きる。こんなバラバラ全部をまとめるなんて事は出来っこない。生きてる限り寝ていたって、全部のどこかが動いている。じっとしている生き物はいない。もちろん文字通り動物は動きっぱなし。動きの組み合わせで生じる喜怒哀楽のひきこもごもをぶちまけてみようじゃないか。だからそこにあるのは、指揮者のいないオーケストラ、オーケストレーションである。それに気づけば、笑うしかない。
荒野の狼

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