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アモーレのたくのレビュー・感想・評価

アモーレ(1948年製作の映画)
3.7
全編ほぼ一人芝居によるロベルト・ロッセリーニ監督の1948年作品。2話構成になっており、テロップに出る「アンナ・マニャーニの演技に敬意を表して」という言葉のとおり、彼女の演技力だけで観るものを惹きつけるところに彼女が希代の女優であったことが示される。第1話がジャン・コクトーの戯曲、第2話がフェデリコ・フェリーニの脚本によるもので、共に愛に身を捧げる女性の悲哀を全身全霊で表現するアンナ・マニャーニの女臭さが彼女ならではの魅力。

第1話「人間の声」は、暗い部屋で孤独に電話を待つ女性が、ようやくかかってきた元恋人の男性からの電話に必死で縋りつく様子が痛々しい。部屋で飼ってる犬はもはや彼女の癒しにはならず、切れてはまたかかってくる電話に翻弄されながら、この愛の絶望的な結末を受け入れざるを得ない嘆きで終わるアンナ・マニャーニの顔のアップが目に焼き付く。

第2話「奇蹟」は、通りすがりの男を聖ヨゼフと思い込んだ村の女がワインで酔わされて犯され妊娠してしまう話で、おそらく本人は聖母マリアのような処女懐胎だと信じてる。これは信仰の本質を突いていて、事実はどうであろうと神を信じる心が本人にとっては全てということだね。村から追い出された彼女が一人で出産する姿に女の強さが刻印されてて、同じロッセリーニの「ストロンボリ」の結末に通ずるものを感じた。
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