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剣鬼のあのレビュー・感想・評価

剣鬼(1965年製作の映画)
4.6
一本道を爆速で追い上げてきて、終いには馬を追い越す市川雷蔵がシュールすぎて笑いそうになりましたが、しっかりとありえる演出に踏みとどまっているところが流石でした。にしても、あのシーンはどう撮ったのか...?

キレの良さは相変わらずで、とにかく市川雷蔵の殺陣の速さは言わずもがな、居合いシーンの引きと寄りのリズムのよさがまさに神がかり的でした。

また、冒頭の母と犬のワイヤレス獣姦シーンの、あの異様な黒い空間など、舞台空間の美しさが非常に楽しめる作品でもあります。特に、人里離れた川辺に花が咲いたところで仇討ちの舞台になるところは、演者自らが舞台を用意したわけですから、かなり個性的だと思いました。

さらに言うと、見て分かるシーンをわざわざセリフで言うシーンがありながら、究極的に映画的でありえることを証明してもいます。そういうところもしっかりと言葉で説明してあげてこそプロなんだ、と痛感させられました。

該当箇所は、ちょうどクライマックスに入るところに当たります。あくまで映画をあまり見ていない観客を最優先しながらも、映画的な理想も追求した、まさに夢のような作品です。万人のための映画ですこれは。
あ