えいこ

タンポポのえいこのレビュー・感想・評価

タンポポ(1985年製作の映画)
4.3
食べることは生きること。一軒のラーメン屋を立て直す物語を軸に、様々なエピソードがこのひとつのテーマで編み上げられる。その一つひとつに伊丹十三の粋なこだわりが見える。悪趣味に堕ちかねないギリギリをセンスよく見せていくのが生来の気品なのかしら。

ラーメン・ウエスタンという一見突飛な仕立ても不思議と違和感はなく、一心に美味しさを追求していく道のりもテンポよい。生牡蠣を啜り、あのスープが味わいたくなる。そして、チェブラーシカのシャパクリャクのようなお婆さんのシーンが妙に気になる。食べるということには、人生のいろいろが詰まっている。食事をつくり養うことが人生そのものである母親。そして死を悼みながらもお腹が空く本能。ごった煮のような汁から、澄んだスープが出来上がるように人生が肯定される感じ。

無垢な舌で初めて味わう幸せなラストシーンはその象徴。
えいこ

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