BOB

タンポポのBOBのレビュー・感想・評価

タンポポ(1985年製作の映画)
4.0
"ラーメン・ウェスタン"と称される、伊丹十三の監督第2作。

流れ者のトラック運転手が、未亡人が経営する寂れたラーメン屋を、町一番のラーメン屋にするべく奮闘する。

🍜🍜🍜🍜🍜🤠🤠🤠🤠🤠

初伊丹十三監督作品。

『シェーン』と『荒野の七人』を掛け合わせたような、笑いあり涙ありのラーメン人情劇。こりゃ堪らん!気に入った!!

一風変わった構成が独特の味わい深さを生んでいる。メインのラーメン屋サクセスストーリーが進行していく中で、"食"に纏わる短編が合間合間に挟まれる。懐石料理のように、バラエティ豊かで、バランスが良く、どれも美味しい。

飯テロ映画の決定版。美味しそうな料理が次から次へと出てくるので、兎にも角にも腹が減る!ラーメン文化をはじめ、日本の食文化や、日本人の食に対する拘りや美意識が詰まっているので、日本食PRにも一役買いそう。

"食"に纏わるコントが面白い。フレンチ・レストランでの注文時にグルメな新人社員が上司たちに赤っ恥をかかせるシーンが一番のお気に入り🍷。スパゲティの食べ方講座にて、店内で食事をする外国人に倣ってすすり倒すシーンや、ご老人が喉につまらせた餅を掃除機で吸い上げるシーンも、目の付け所が日本らしくて笑える。

食と性、"食べる"ことのエロティシズム。ヤクザの男が恋人と生卵を口で移し合うシーンや、幼い海女さんから採れたての牡蠣を食べさせてもらうシーンは非常に官能的。お婆さんがスーパーの売り場に並ぶ桃やチーズを指でムニムニ押すエピソードや、東北大学教授を装うベテラン摺り師が生春巻きを頬張るエピソードも艶めかしい。全ての人間にとって"人生最初の食事"である授乳シーンで、映画が締め括られるのも秀逸。

生々しいすっぽん捌き。食べるということは命を頂くということ。

「人間最後の映画。この映画だけ俺は邪魔されたくないんだ。」
プレタイトルシークエンスから伊丹十三劇場炸裂。役所広司扮する真っ白なスーツに身を包んだヤクザが、マナー違反をする映画館の客にぶち切れる。カタルシスが半端ない。一度"NO MORE 映画泥棒"の次にでも流してみてはいかがだろうか。笑

山崎努、宮本信子、若き日の役所広司と渡辺謙。みんな人間味に溢れていて良いね〜。

・オムレツシークエンスは、チャップリン『黄金狂時代』へのオマージュ。

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