ERI

タンポポのERIのレビュー・感想・評価

タンポポ(1985年製作の映画)
4.2
伊丹十三さんの映画ってこんなに面白いんだ!ちゃんとみたの初めて(部分的にはあるけれど)昔はきっとテレビで放送されてた記憶があるし、シーンシーンは見たことがある気がするけど。

素晴らしいな。濃度が濃くて才能がぎゅうぎゅうで、センスがいい。この映画撮ってる時、楽しくてたまらなかったんじゃないかなと伝わるぐらい熱量もキャストスタッフ、そして監督の愛が漏れてます。この映画を見終わると映画ポスターさえ、この世界感なのが頷ける。

最初から最後まで食べるシーン。食べるは愛するだし、食べるは生きる。死ぬまで人は食べる。食べることへの敬意。

本筋は、ラーメン屋さんをしてる未亡人たんぽぽのお店をゴローが立て直すお話。ラーメンウエスタン。ご飯は美味しいのに、ラーメンが美味しくない。沸騰しきってない大鍋でゆるく茹でられた麺。ぬるいスープ。ひょんなことからタンクローリーのドライバーをしてふと店に立ち寄ったゴローに、たんぽぽはラーメンの教えを請う。いちいちシュールで笑ってしまう。ラーメン屋を立て直していく過程で様々な師匠やサポートを受けてたんぽぽはぐんぐん成長していく。

合間に食にまつわる皮肉的エピソードや、官能的シーンが出てきて、本筋とは関係ないけど映画の表現してる世界には重要でどの場面もとても良い。本当にどれも唸るほど良いのだけど、一番は母ちゃんがなくなる話かな。あのシーンは一度見たことがあって幼ながらに印象的で、今回映画を見てこの作品のシーンだったんだと繋がった。寝ちゃダメだよ。ご飯作ってよ。と必死に生きようと家族に作るチャーハン。それを囲んで美味しいよ母ちゃんと食べるシーンはかなりグッと来る。

とにかく伊丹組のキャストが濃くて、みんな当時若くて痩せていてお芝居が魅力的で釘付けです。いちいちどのシーンもかっこいいんだよ。構図もスタイルも何もかもかっこいい。桜金造さんや大滝秀治さん、ほかにもこの人!という役者さんがちょっとだけ出てるのも楽しい。かなり見応えがあります。そしてホームレス役の方々も含めてみんなお芝居がうますぎて、そしてそれぞれの顔がよい。アップの描写が多いのだけど、こんなに役者の魅せ方がうまいってすごいな。役所広司さんの最後の死ぬシーンとか忘れられない。

伊丹十三さん作品を制覇したい。
ERI

ERI