三隅炎雄

任侠魚河岸(かし)の石松の三隅炎雄のレビュー・感想・評価

任侠魚河岸(かし)の石松(1967年製作の映画)
3.8
宮本幹也の小説は50年代に河津清三郎、堀雄二、今井健二と役者を変えてシリーズ化されている。これは北島三郎を主演に喜劇風味の任侠アクションとして67年に作られたもの。
昭和三十三年の魚河岸、北島三郎は魚河岸労働者の生活改善を目指し小さな組合を立ち上げた快男児。仲間がキャバレーで魚臭いと言われりゃマグロ一尾背負って乗り込み、小揚人足と小馬鹿にされりゃ俺たちゃ運搬人、立派な魚河岸の従業員だあと胸を張る。そのサブちゃんが河岸の利権に手を伸ばす天津敏らやくざを退治する話である。
生き生きとしたキャラクターが繰り広げる猥雑な笑いと切れ味の良いアクション、差し込まれる抒情美。細やかな演技指導、手抜きのない画面は初作以来変わらないが、鈴木則文は四作目のこれでひとつ固有の世界を掴んだように見える。わいわいと大衆食堂的でありつつ、ちょっとしたところが垢抜けて洒落ているのが鈴木則文のハイカラ美質。北島の演歌の入りどころを、任侠映画とはひとつ位置をずらして、歌謡映画として鮮やかに纏めてみせたのには唸った。

途中、内田朝雄の水産会社がビキニ環礁の水爆実験の影響で負債を抱え、漸く返済が半分まで来たという台詞が出て来る。昭和29年だからこれより4年前になる。
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