きゅうげん

偉大なるアンバーソン家の人々のきゅうげんのレビュー・感想・評価

3.7
偉大なるオーソン・ウェルズの劇場公開第二作。
しかし制作会社RKOによって追加撮影や再編集(手掛けたのはロバート・ワイズ)がなされ、バーナード・ハーマンの音楽も削除、ウェルズ自身の意には沿わない結果となったようで……。

『市民ケーン』が、肥大化し暴走する資本主義そのものの大河的な一代記だったのに対し、こちらはそんな社会の分水嶺の暴流に呑まれ没落していった、ある一家を追う連続小説っぽいメロドラマです。
『市民ケーン』の壮大で荘厳な圧倒的存在感やモダンなランドスケープとはまた異なりますが、しかしアンバーソン家の邸宅の豪華絢爛さには目を見張るものがあり(cf:舞踏会)、そんな壮麗さを活かした撮影のワザには息を呑まざるをえません(cf:螺旋階段)。
まるで“ラス・メニーナス”のような画面構成や、ドレの版画のような光と影は、素晴らしすぎる撮影の妙です。
勝手にカットされた部分が惜しまれます……。

またゴチャゴチャぐだぐだの会話劇。
メインの話題にリアクションやレスポンスの横槍を入れてくる感じに、知人や親戚との関係の機微が反映されてて絶妙にリアル。
そのためにより際立つのがジョージの成長です。世間知らずで自己中心的なお坊ちゃんが、重く辛く切ない現実を自覚し、自活するも挫折してゆく様子は目も当てられません。

……が、急転直下なハッピーエンドのノリに面食らい……。陰惨で辛辣な独自のラストが尊重されなかったのは残念ですが、しかし、アンバーソンさん家とモーガンさん家の再会というオチでも、人情噺っぽくて悪くはないかな……なんて思います。