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デンデラのakqnyのレビュー・感想・評価

デンデラ(2011年製作の映画)
3.7
共同体を維持するために年寄りが捨てられる習慣のある東北の村で、社会から排除された死に損ないのババア達の復讐が始まる、、
この見出しだけで十分面白いのだが、意外にも物語のテーマは、盲目的に死ぬか、地獄で生きるかなのではないかと思った。


社会のため、お国のために死んだはずが、実際は男たちや権力者を肥やすために死んだことに気づく婆さんズ。

その村を破壊することで自らの正当性を証明する武力による改革と、自分たちの新しい社会を構築維持することで正当性を証明する文治の改革。

そして人と人との問題なんか関係のないように天災が襲い、武力改革も文治改革もすべて自然の前では無力と知る。


生き延びてしまったがゆえに感じた喜びと、それが破壊否定される地獄。もし旧来の価値観をなにも疑うことなく死んでいれば、きっと世界の真実など知ることもなくむしろ幸せなのかもしれない。けれど、人間が素晴らしいのは、真実のために地獄を必死に生きることではないのか。そしてその過程で天国はきっと見えるんだと思う。地獄を生きることでしか天国は見えない。

この婆さんたちは、盲目的に死ぬことを選ばす、地獄で懸命に生きた。

盲目的であることや右へ倣えを美徳としてきた反面、ねつ造や改竄と格差拡大が横行するこの国のこの時代は、もう地獄なのかもしれないが、おれたちは絶対に盲目的に死んではいけないし、死なないからなという気持ち。


(クマの着ぐるみ感もうちょいなんとかなんなかったのかしら)
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