ツクヨミ

東京物語のツクヨミのレビュー・感想・評価

東京物語(1953年製作の映画)
4.7
日本古来から続く"人の温かさ"
尾道で暮らす老夫婦は息子や娘が暮らす東京を訪れる。観光や熱海で温泉に入って休暇を楽しむ夫婦だったが、徐々に居心地の悪さに気づいていく…
小津安二郎監督作品。老夫婦と息子娘の家族関係を主軸とした人間ドラマ。今作は戦後当時の東京を背景として人間の内面をしっかりと描いた作風に心温まりました。今の日本人が忘れてしまったようなゆったりとした生活は少し憧れを抱いてしまう。
そして小津安二郎監督と言えばのローポジションを活用した定点ショットが画面の美しさを際立たせていました。今作は家の中のシーンが多いので独特の日本家屋感を味わうにはピッタリな撮影。
また今作は魅力的で分かりみが深すぎるセリフが多かった。特に終盤で京子が家族の冷徹さを吐露するシーン、見ている人が感じているはずの事柄をしっかり言葉で表現していて良い。そして返しに紀子が言うセリフ"なりたくはないけどいずれはそうなってしまう、嫌ねぇ世の中って、そう嫌なことばかり"はいつの時代でも変わらない不変的な家族関係を表していて素直に納得してしまった。紀子役の原節子の温かさは今作の癒しであり、監督がこういう人でありたいという願望を映しているかのよう。
全体を通して昭和日本の雰囲気を味わえて、人間の冷徹さと温かさをしっかり表現した人間ドラマに心を掴まれ感嘆の涙を流す素晴らしい作品でした。
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