following剣さんこと、剣々さん主催の「まだ観てないん会」で鑑賞。
生まれて初めて観た小津安二郎作品。
これは10代、20代の私が観たら何にも魅力が分からなかったと思う。
固定されたカメラが、淡々と抑揚のない日常のやり取りを映すだけ。
歴史的な事件も壮大な奇跡もない。
能面がセリフを読み上げているような、これが演技?と戸惑いを覚えたのも束の間。
徐々に生々しい感情が浮かんでくる。
いつしか引き込まれ、スクリーン(自宅だけど💦)と対話する不思議な感覚が生まれた。
以下、長文になってしまったので
興味のある方だけ読んでくださればさいわいです🙇♀️✨
剣さん、キッカケをくださりありがとうございました🥹🙏✨
ご一緒できた皆様もありがとうございます✨
歳を重ねるごとに何度でも観たいと思う名作でした✨
🫧🫧🫧 以下ネタバレ全開で 🌫🌫🌫
◆印象的な冒頭のシーン
旅支度をする老夫婦。
とみ「空気枕 ありゃんしぇんよ こっちにゃ」
周吉「ないこたないわ よう探してみぃ
ああ あったあった」
と み「ありゃんしたか」
周吉「ああ あった」
空気枕を探せず、妻が別の場所に入れたのかと思い込み、問い正す夫。
(実際には夫が単に見落としていただけ)
「ああ あったあった」と言うだけで謝らない夫に、
「ありゃんしたか」と、言うだけで受け容れる妻。
昔(?)は、女が懐の深さで男を支えていたと思わされた。
それと同時にこうして歳を重ねてきた老夫婦の姿を捉えているのが印象的だった。
◆印象的なキャラ
長女の志げ(杉村春子)。
尾道から上京し必死に生活しているらしい。
合理的な発想の持ち主できっと仕事は出来るでしょう。
テキパキしているけれど、他者の気持ちが常に置き去りになりがちで、心の中にしまっておいた方がよい本音まで正直に口をついて出てくるのが見ていてツラい😫
折角、上京した両親をどこへも観光案内できないならこその“熱海”
でも急遽、手配された安宿では他の宿泊客が騒いでいて、老いた親は一緒に飛び入り参加することもできず、ひたすら眠れないだけ。
そのギャップもツラい😔
(志げみたいな人、親戚に1人はいるよね)
翌日予定を切り上げて志げの家に戻った両親に、おかえりなさいの一言もなく
「アーラ もう帰ってらしったの?」😵←私
美容院を営む志げは接客中。
客人「どなた?」
志げ「ええ ちょいと知り合いの者……い なかから出て来まして……」 😱←私
客人「そう」
以降、志げのホラー的発言は続々と。。
悪気はない。それはよくわかる。
でも言って悪いことはやっぱりある。私も老いていく親に対してやさしく接したいので戒めにする。
◆印象的な両親のセリフ
周吉「ウーム よう昔から子供より孫がかわいい言うけえどー
お前ァ どうじゃった?」
とみ「お父さんは?」
周吉「やっぱり子供のほうがええのう」
とみ「そうですなァ」
周吉「でも 子供も大きうなると変るもんじゃのう
志げも子供の時分はもっと優しい子だったじゃにゃァか」
とみ「そうでしたなァ」
周吉「おなごの子ァ嫁にやったら おしまいじゃ」
とみ「幸一も変りやんしたよ あの子も もっと優しい子でしたがのう」
周吉「なかなか親の思うようにァいかんもんじゃ……」
二 人、笑う。
周吉「欲を言や切りァにゃァが まァええほうじゃよ」
とみ「ええほうですとも よっぽどええほうでさ わたしらァ幸せでさあ」
周吉「そうじゃのう……
まァ幸せなほうじゃのう」
とみ「そうでさ 幸せなほうでさ……」
◆印象的な終盤のシーン
いつも完璧な笑顔の紀子(のりこ)さん(原節子)が、周吉にだけ本心を吐露するシーンがある。
そんな出来た人間じゃありません、負の感情に苦しむことだってありますの、と打ち明けられたようで共感した。
身内にはつい甘えが出てしまう、そんな老夫婦の子どもたちを包んでくれる、
そして、同時に紀子さんの献身もあたたかくくるんでくれる、やさしい慰めに満ちたシーンが以下だった。
周吉に、とめの懐中時計を差し出されて
紀子「でもそんな……」
周吉「ええんじゃよ もろうといておくれ」
周吉は時計を紀子の前に置く。
「いやァ あんたに使うてもらやァ お母さんもきっとよろこぶ なあ-
もろうてやっておくれ」
泣き出す紀子。
紀子「すいません……」
周吉「いやァ…… お父さん ほんとにあんたが気兼ねのう さきざき幸せになってくれることを祈っとるよ- ほんとじゃよ」
紀子、顔を両手で覆い泣く。
周吉「妙なもんじゃ…… 自分が育てた子供より-
いわば他人のあんたのほうが よっぽどわしらにようしてくれた
いやァ ありがと」
周吉は頭を下げる。
紀子も顔を両手で覆い泣きながら頭を下げ、泣き続ける。
_φ(・_・ ✨
⭐️小津調の特徴的なスタイル
・ロー・ポジションで撮影
・極力カメラを固定
・人物や小道具を相似形に配置
・小道具や人物の配置に特別な注意
・ディゾルブやフェードなどの文法的技法は非使用
◆ディゾルブ
画面転換の技法。
画面が次第に消えて行くに連れ次の画面がとけ込む感じで入れ替わる。
◆フェードは映像編集技術用語のひとつ
・フェードイン(fade-in)とフェードアウト (fade-out) の2種類あり
・物語の展開上、区切りとして使用される
・フェードイン「一色の状態から徐々に映像が見えている状態に移り変わること」
・フェードアウト「映像が見えている状態から徐々に一色に移り変わること」
⭐️テーマ
小津は生涯を通して家族を題材にとり、親と子の関係や家族の解体などを描いた。
批評家から「進歩がない」「いつも同じ」と批判されたが、これに対して小津は自身を「豆腐屋」に例えた。
「豆腐屋にカレーだのとんかつ作れったって、うまいものが出来るはずがない」
「僕は豆腐屋だ。せいぜいガンモドキしか作れぬ。トンカツやビフテキはその専門の人々に任せる」